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 これが首相が約束した「うみを出し切る」ことなのか。

 財務省が、辞任した福田淳一前事務次官にセクハラ行為があったと認め、減給処分に相当するとの見解を発表した。

 ところが、その説明は到底納得できるものではない。

 財務省によると、福田氏は依然として疑いを否定している。しかし、問題の日にテレビ朝日の女性社員と1対1で飲食したことは認めた。そして女性側の主張を覆すだけの反論をしていない。だからセクハラがあったと判断した。これをもって調査は終了する――というのだ。

 つまり具体的な事実を認定しないまま、とりあえず処分だけして幕引きにするという話である。大型連休が終わるころには世間の関心も薄れるだろう。そんな下心がのぞく。

 もう一つ見過ごせないのは、財務省が「調査に時間をかけすぎることも被害者保護上問題だ」とコメントした点だ。被害者の人権を踏みにじる言動を重ねた揚げ句に、「被害者保護」を理由に調査の打ち切りを正当化する。あいた口がふさがらないとはこのことだ。

 女性社員は、1年半ほど前から取材のために福田氏と複数回会い、そのたびにセクハラ行為があったと訴えている。これに対する回答もない。財務省の発表を受けたテレビ朝日が、引き続き詳細な調査をするよう要請したのは当然である。

 責任の所在を明確にするためにも、そしてセクハラを生んだ土壌を改めるためにも、事実の解明が欠かせない。それをせずに、「先進的組織に生まれ変わる」(矢野康治官房長)と言っても、誰が信じるか。口先で終わるのは明らかだ。

 財務省への批判がこれほど高まった原因は、一義的には福田氏の行為にある。しかし、それだけではない。問題の発覚当初からの役所全体の対応が、常識とあまりにかけ離れていたことが、人々の怒りを呼んだ。

 その自覚はいまもないのだろう。「(福田氏は)はめられて訴えられているんじゃないかとか、ご意見は世の中にいっぱいある」と述べた麻生財務相は、おとといの会見でその意図を問われ、「そういう話があると紹介しただけ」と言い放った。

 これが、福田氏の任命や監督について、重い責任を負うべき大臣の態度なのか。

 事務方トップが破廉恥行為で地位を追われ、「最強官庁」の名声も地に落ちた。なぜこんなことになったのか。組織として原因を究明し、病の根を絶たない限り、財務省の再生はない。

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