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 日本銀行は、4月末に出した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の本文から、物価上昇率2%という目標の達成時期見通しを削除した。これまで6回も達成が後ずれする中で、目標と見通しの区別をあいまいにしてきた従来の姿勢が、混乱を招くと判断したようだ。

 政策目標と客観的見通しをはっきり区別すること自体は、遅きに失したとはいえ望ましい方向だ。だが、たんに記述を削除するだけでは、「目標未達」の批判を避けるための責任逃れと言わざるをえない。

 まず問われるのは、日銀の「見通し」が本当に信頼できるものなのか、という点だ。日銀は、2013年4月に「異次元緩和」を始めた当初、2%の目標を2年程度で達成すると表明したが、実現できなかった。

 その後、政策目標の達成時期は「できるだけ早期」に変える一方、四半期に一度公表される展望リポートでは、発表時からおおむね1~2年後に物価上昇率は2%に届くという「見通し」を示し続けた。

 今回のリポートでも、本文からは削除したが、参考数値としては19年度に1・8%という見通しを維持している。民間予測の大勢である1%弱と比べ、かなり高い数値だ。

 日銀の現在の政策は、経済や物価の先行きについての家計や企業の予想に働きかけることを重視する。日銀が達成時期の見通しを遅らせれば、この予想の足を引っ張る可能性がある。

 かといって、マイナスを打ち消すための金融緩和強化は、手段が限られるうえ、副作用の懸念もあり、実行しづらい。

 こうした構図が見通しの現実性を損ない、民間より楽観的な予測を示し続ける結果につながってはいなかったか。今回の削除を機に、そうした疑念を払拭(ふっしょく)し、地に足のついた見通しを示すことが全ての出発点になる。

 加えて、目標達成まで時間がかかっていることの説明責任も、引き続き問われる。

 日銀による16年9月の「総括的検証」では、原油価格の下落や消費増税、さらに過去の物価動向に引きずられる傾向の強さが、目標を達成できない理由として指摘された。その後1年半あまり経過したが、目標にはなお程遠い。

 何が物価上昇を妨げているのか。それは現行の金融政策で乗り越えられるものなのか。国債の大量購入やマイナス金利、株式投資信託の買い入れという異例の政策を続けている以上、より深い分析と十分な説明が必要不可欠だ。

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