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 安定した成長を続け、世界経済を牽引(けんいん)する東南アジアで、民主主義が変調をきたしている。

 民主的な政治制度は持ちながら権威主義に逆戻りしたり、軍事政権が居座ったりする例が目につく。

 強権的な手法は国民の間に分断を生みやすい。多様な民族、宗教が混在する東南アジアではなおさらである。政治指導者はその危うさを理解すべきだ。

 マレーシアのナジブ政権は、5月の総選挙を前に有力野党の活動を30日間停止した。書類の不備が理由だ。与党に有利なように選挙区割りを変え、政権批判を「フェイクニュース」として封じる法律も成立させた。

 7月に予定されるカンボジアの総選挙は実質、野党抜きの見込みだ。昨年、最大野党の党首が国家反逆罪で訴追され、最高裁が解党を命じたからだ。

 民意を反映させる選挙制度を骨抜きにする行為である。

 いま、この地域で強権政治がはびこる背景に、米国の存在感の低下と中国の影響力の増大があることは間違いあるまい。

 中国は人権などでうるさいことを言わず、経済援助は気前がいい。その支援があれば欧米の懸念など気にせずに済む、というわけだろう。中国は09年から東南アジア諸国連合(ASEAN)の最大の貿易相手国だ。

 フィリピン政府は、人道に対する罪などを裁く国際刑事裁判所からの脱退を国連に伝えた。ドゥテルテ大統領が進める強引な麻薬撲滅作戦について予備調査を始めたことに反発した。

 4年前のクーデターから軍事政権が続くタイでは、国際社会の批判を受けながら民政移管が何度も先送りされた。

 日本はかつて東南アジア地域を植民地支配した反省をふまえ、戦後は賠償や政府の途上国援助を通じてインフラや市民社会の整備を後押ししてきた。

 重要な貿易相手であり、多くの日本企業が進出している。互いの利益につながるよう関係を深めることは重要だ。だが、それは人権や法の支配に後ろ向きな政権への「物わかりの良さ」を競うことではないはずだ。

 カンボジア総選挙では、欧州連合と米国が支援停止を表明したのに対し、日本は中国とともに継続を決めた。「関与しなければ政権を中国側に追いやる」という理由だが、「強権政治を追認する」との内外の批判にも耳を傾けるべきだろう。

 「自由、民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着、拡大に共に努力する」。日本が掲げるASEAN外交の原則を忘れてはならない。

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