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 イランの核開発を抑える国際合意の枠組みは、外交の努力が結実した歴史的な成果である。崩壊させてはならない。

 トランプ米大統領がまたも、一方的で無責任な決定を発表した。この合意から離脱し、経済制裁を復活させる。

 合意はオバマ政権下の米国と英仏独中ロの6カ国が、イランと3年前に結んだ。国連安保理も承認の決議をしており、国際社会としての約束である。

 それを米国がほごにし、再びイランとの対立をあおる。英仏独の首脳が「遺憾と懸念」を表明したのは当然だろう。

 イランのロハニ大統領は、合意の維持をめざして米国以外の5カ国と話しあう意向だ。冷静な対応を評価する。

 ただ、米の制裁復活で経済が悪化すれば、対決路線を唱える強硬派の発言力が増す。成り行き次第では、ウラン濃縮を再開する可能性も示唆している。

 核危機を絶対に招いてはならない。今後、重要なのは英仏独の役割である。合意後に深めてきた経済関係を生かし、イランの穏健派を支えるべきだ。

 この合意は、核の拡散を阻むとともに、中東発の混乱が世界の安全と経済を脅かす事態を防ぐために欠かせない重しだ。

 イランは、米欧による経済制裁の解除という実利を得る代わりに核開発を大幅に縮小した。国際原子力機関は査察を続けており、イランが約束を守っていることを確認している。

 その「たが」がはずれれば、敵対するイスラエルが軍事行動にでる恐れが捨てきれない。サウジアラビアなどアラブ諸国も核競争に走る可能性がある。

 トランプ氏は、ミサイル開発や核規制の期限などの「欠陥」を挙げて合意を批判してきた。不十分な点は追加の議論をすればよい。合意そのものを否定するのは本末転倒だろう。

 今回のトランプ氏の決断は、イスラエルを支持する米国内の自らの支持基盤を意識したとみられる。国内政治の思惑で約束をひるがえす米外交は、着実に信頼をなくしつつある。

 それは、いま進められている北朝鮮の核問題の交渉にも悪影響を及ぼしかねない。朝鮮半島も中東も、国際社会との協調に背を向ける米国の単独行動では決して和平を築けない。

 米外交の一貫性を保つ責任と利益を、トランプ氏にどうやって理解させるか。英仏独の首脳が続ける説得の努力に、安倍首相も加わるべきだ。「日米は100%ともにある」と繰り返すだけでは、健全な関係とは言えない。

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