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 東アジアの国際関係に地殻変動が起きるかもしれない今だからこそ、安倍政権が後回しにしてきた近隣外交という「空白」を埋める作業が必要だ。

 中国の李克強(リーコーチアン)首相、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が来日し、2年半ぶりの日中韓首脳会談が開かれた。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と中国の習近平(シーチンピン)国家主席が異例の再会談に臨み、米国のポンペオ国務長官が北朝鮮を再訪するなど、史上初の米朝首脳会談に向けた動きが激しさを増す中での開催である。

 日中韓の3首脳は、朝鮮半島の非核化に向けた連携で一致。北朝鮮への経済制裁などを盛り込んだ国連安保理の決議を完全に履行していくことでも足並みをそろえた。

 共同宣言のとりまとめが難航するなど食い違いもあったようだが、3首脳がこのタイミングで、北朝鮮への対応について突っ込んだ意見交換をした意義は小さくない。

 元々、日中韓の首脳会談は10年前にスタートし、年1回の開催が想定されていた。2年半のブランクがあったのは、この間、3カ国の関係がうまくいっていなかったことの反映だ。

 これまで安倍首相は日米同盟の強化やトランプ米大統領との「蜜月」をアピール。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、「76カ国・地域を訪問し、600回の首脳会談を行った」(1月の施政方針演説)と強調してきたが、足元の近隣外交はおろそかだったと言わざるを得ない。

 北朝鮮が今後どう動くかは予断を許さない。とはいえ、もはや米国一辺倒、圧力一辺倒という硬直的な姿勢で立ちゆかないことは明らかだ。刻々と変化する情勢に機敏に対応するためにも、中韓両国との緊密な意思疎通が欠かせない。

 会談では、領土や歴史の問題が前面に出ることはなかった。ナショナリズムを政治的に利用することは避け、経済連携や環境、防災など共通のテーマを設定し、実務的な協議を重層的に進めることこそ、信頼関係の強化につながるだろう。

 その意味で、日中間の懸案だった防衛当局間の「海空連絡メカニズム」がようやく合意に至ったのは一歩前進だ。偶発的な衝突を避けるため、さらに実効性を高める必要がある。

 東アジアの平和と安定は日中韓3カ国に共通の利益である。朝鮮半島情勢の軟着陸をはかるためにも、緊密な連携が不可欠だ。米朝首脳会談の行方を見守るだけでなく、長期的な視野にたって、首脳間の対話を進めていくべきだ。

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