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 幹部自衛官が、国民の代表である国会議員を罵倒する異常事態に対して、この処分は軽すぎる。防衛省は問題の深刻さを見誤っていないか。

 統合幕僚監部に勤務する30代の3等空佐が、当時民進党だった小西洋之参院議員(無所属)に暴言を吐いた問題で、防衛省は3佐への懲戒処分を見送り、訓戒にとどめた。

 懲戒処分は自衛隊法に基づき免職、降任、停職、減給、戒告の5段階。懲戒に至らない軽微な規律違反には、内規に基づく訓戒、注意が適用される。最も軽いのが、業務上の指導としての口頭注意だ。

 訓戒は下から3番目に軽い処分でしかない。たとえば16年1月の参院予算委員会に、防衛省幹部3人が大雪で遅刻した時の処分も訓戒だった。

 3佐の言動は、政治が軍事に優越するシビリアンコントロール(文民統制)の原則を明らかに逸脱している。それを遅刻と同程度の処分とはいかがなものか。甘い処分は統制を形骸化させ、将来に禍根を残す。

 首をかしげるのは、処分の理由が自衛隊法58条の「品位を保つ義務」違反とされ、61条に定めた「政治的行為の制限」違反を認めなかったことだ。

 防衛省の聴取に、3佐は「国民の敵」とは言っていないと主張したが、「あなたがやっていることは日本の国益を損なう」「馬鹿」「気持ち悪い」などの発言は認めた。安全保障関連法に強く反対した小西氏について「政府・自衛隊とは違う方向での対応が多い」と認識していたという。これが「政治的行為」でないというのは、ふつうの感覚では理解に苦しむ。

 そのうえで防衛省は、3佐がジョギング中に小西氏と遭遇した際の「偶発的」「私的」な発言で「文民統制を否定するものではない」と位置づけた。

 だが、3佐は相手が国会議員と承知のうえで、自衛官と名乗り、その政治姿勢を公然と批判した。これを偶発的で私的な発言とみなすのは、事態の矮小(わいしょう)化そのものだ。河野克俊・統合幕僚長が発覚後の会見で「文民統制に疑義が生じている」と語ったのは何だったのか。

 戦前、軍部が暴走した反省から、自衛隊には憲法や法律に基づく制約が課されてきた。ところが安倍政権は、その憲法や国会を軽んじ、批判的な野党を敵視する姿勢が目立つ。

 政治が生み出す空気が甘い処分の背景にあるとすれば、危うい。自衛隊への信頼の根幹を支える文民統制と政治的中立を、有名無実化させてはならない。

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