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 演説の力点が、軍拡から国民生活の向上に変わった。本当に経済を上向かせたいなら、強引な対外政策を見直すべきだ。

 ロシアのプーチン大統領が、通算4期目の就任式に臨んだ。首相には、現職のメドベージェフ氏を任命した。

 2人がトップの座を独占して、すでに10年。3月の大統領選は圧勝したものの、就任式を前に全国で反政権デモが起き、国民に飽きも広がっている。

 それを意識してのことだろう。就任演説でプーチン氏が最重要課題と位置づけたのが、国民の暮らしの改善だった。

 大統領令で、平均寿命78歳の実現、実質所得の向上、住宅建設の増加など、2024年までの任期の目標を掲げた。

 3月の議会向け演説では、核ミサイルなど最新兵器を誇示し、米国に屈しないロシアの姿を強調していた。求心力を高めるために愛国心をあおる時期は終わったという判断だろう。

 足元の国民経済の立て直しに軸足を移すのなら、健全な転換だ。しかし残念なことに、国際社会との協調関係をめざす姿勢はほとんど示さなかった。

 プーチン政権は4年前、ウクライナのクリミア半島を併合した。その後、ウクライナの親ロ派武装勢力を支援し、欧米などから経済制裁を受けている。

 プーチン氏は「危機は乗り切った」と言うが、経済の屋台骨である石油、天然ガス開発への欧米からの投資は滞り、中国資金への依存が進んでいる。

 原油価格の下落もあり、一時は世界8位だった国内総生産(GDP)は12位に落ちた。

 プーチン氏は、天然資源に頼る構造からの脱却や投資環境の改善を訴えるが、それには欧米などとの協力が不可欠だ。

 政治・軍事の分野で国際的な規範を平然と無視する一方で、経済協力だけは取り付けようという考えだとすれば、虫が良すぎると言わざるをえない。

 ウクライナやシリアへの軍事的な関与を見直し、朝鮮半島や中東などの和平づくりに主要国と共に取りくむ。ロシアには、その責務がある。

 直面している苦境の背景として、プーチン氏は演説で、ソ連崩壊の後遺症が続いているとの旧来の見方を繰り返した。

 だが、当時生まれた人はすでに20代後半。若い世代が納得できる将来のビジョンを示せない限り、信頼は保てまい。

 権力の独占を改めつつ、対外協調の国家像を内外に示す。そして次世代の指導層が民主的に選ばれるよう環境を整える。それがプーチン氏の課題である。

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