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 交通インフラが整うと、その恩恵がとりわけ大型事業では見えやすい。ただ、整備に伴う国民負担を忘れてはならない。

 本州と四国を結ぶ本四架橋3ルートのうち、最初の瀬戸大橋の開通から今春で30年、続く明石海峡大橋の開通からも20年になった。

 瀬戸内海の両岸とその間の島々が結ばれ、ヒトやモノの流れは大きく変わった。通勤通学をはじめ生活ルートとして定着したほか、多くの観光客が行き来する。四国の産物を本州の大市場に届けやすくなるなど、産業面での利点も少なくない。

 一方、建設に伴う借金の返済では、全国の高速道路の利用者が少なくともあと40年間、負担を続ける計画だ。

 本四3ルートを含む新全国総合開発計画が閣議決定されたのは1969年。石油危機で一時着工が延期され、75年には関係閣僚が「当面1ルート」で合意した。しかし地元の要望を国会議員らが後押しし、3ルートが並行して造られた。

 総工費は約2兆9千億円。2005年の道路公団民営化に合わせ、3兆8千億円に膨らんだ旧本四公団の借金のうち3分の1強を国が穴埋めした上で、国と中四国、近畿の10府県市が毎年度、資金を出し続けた。拠出は13年度で打ち切られたが、総額は1兆7千億円に達した。

 14年度からは全国の高速料金収入が本四架橋の借金返済に充てられている。赤字道路の乱造を招いた公団時代を反省し、分割民営化で会社・路線ごとの収支管理を徹底することにした改革の趣旨を損なう決定だった。いまの活況も通行料金を大きく引き下げた効果に支えられており、国と自治体の拠出金は返還のメドが立たない。

 老朽化に備えた維持管理という難題も抱える。本四高速会社は「200年以上の利用」を掲げるが、塩害や自然災害で思わぬ事態に直面するおそれがある。異状の早期発見と不断の対策が重要だ。最新技術を導入しながら効率的に対応できるよう、国の支援も必要だろう。

 政府は1980年代後半、本四架橋に続き、関東から九州まで6ルートの海峡横断プロジェクトをまとめた。08年に凍結したが、安倍政権は17年度から、このうち下関北九州道路の調査費に補助金をつけている。

 財政難や人口減を考えると、新たな巨大橋に手をつける余裕がないのは明らかだ。費用対効果を無視した安易な構想を戒めるためにも、本四架橋をとりまく厳しい状況を直視しなければならない。

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