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 地方銀行の経営統合をめぐり、金融庁が競争政策上の「特別扱い」を求める姿勢を打ち出した。企業統合の審査は、公正取引委員会(公取)に独立した権限があり、まずはその判断を尊重すべきだ。ただ、地域金融の将来は厳しい。中長期的な視点で制度のあり方を議論する必要がある。

 金融庁は先月、有識者による検討会議の報告書を公表した。人口減などの影響で、県内で複数の銀行による競争を続けていると、将来「共倒れ」になりかねない地域が多いと分析。地域内で統合を進めることが選択肢になると述べている。

 統合すれば地域内での貸し出しシェアが高まり、競争が薄れる。銀行が貸出先より優位に立ち、金利を上げたり、サービスの質を落としたりする懸念がある。このため、公取は独占禁止法や運用指針に基づき、競争が実質的に制限されるような統合は認めない姿勢をとってきた。

 今回、金融庁が示した報告書は、この点にも踏み込んだ。地域の金融インフラとしての機能の維持や、金融システム不安の回避の観点から、地域内のシェアなどによる是非の判断に疑問を提示。統合による弊害は、金融庁の検査・監督を通じた是正措置で防げるとみている。

 報告書の指摘には、一般論としては、うなずけるものも多い。経済規模の拡大が常態だった時代の制度には、点検すべき部分もあるだろう。公取の指針でも、経営不振が顕在化した段階であれば統合が認められるときがあるが、銀行の場合、経営不安が表面化すれば、危機が連鎖しかねない特殊性もある。

 だが、競争が減ることの副作用も軽視できない。金融庁の権限で防げるのか、慎重な検討が必要だ。地域金融機関に相応の体力が残っているうちに、新たな立法も含め、制度のあり方を熟考することが望ましい。

 一方、報告書は、進行中の具体例として、長崎県の2地銀の統合にも言及した。2年前に発表されたこの統合は、競争を制限する恐れがあるとして公取が難色を示し、他行への借り換えなどでシェアを抑えられるかどうか、検討が続いている。

 金融庁は、報告書が示す考え方を前倒しで採り入れ、この統合を後押しする姿勢を強めている。金融当局の知見を示す範囲ならば問題ない。しかし、公取が現行の法や指針に沿って判断を進めている以上、具体的な事案の審査に圧力をかけるようなことは、あってはならない。制度改革と個別案件は区別して議論するべきだ。

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