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 「アジア・太平洋地域では、急速な経済発展にともなって生態系が壊されつつあり、このままでは生物多様性が損なわれてしまう」「自然と調和した経済成長が求められる」――。

 科学者らでつくる国連の組織(IPBES)が先ごろ、そんな報告書をまとめた。

 日本にとっても他人事で済ませられない内容だ。まずは事実を知ることから始めたい。

 IPBESは6年前に設立され、120を超す国が加わる。生態系の現状などを科学的に分析し、その結果を加盟国の政策づくりに役立ててもらおうという「ご意見番」である。

 報告書によると、魚介類の養殖の9割がアジア・太平洋地域に集中し、海の環境保全に悪影響を及ぼしている。漁船による乱獲もはびこり、30年後には水産資源が枯渇する恐れがある。

 また、東南アジアでは、農林業やバイオ燃料の製造、エビの養殖池をつくるためのマングローブの伐採などによって森林が減り、動物のすみかが失われている。25%もの固有種が絶滅の危機に直面しているという。

 ひるがえって私たちの日常に目を向けてみよう。

 スーパーの売り場には、ベトナムやタイから輸入された鮮魚や、日本人が大好きなエビがたくさん並ぶ。建築現場では、マレーシアやインドネシアの熱帯雨林を伐採した木材が使われている。多くの食品やせっけんに欠かせないパーム油もまた、森林を切り開いて栽培したアブラヤシから採ったものだ。

 日本の社会やくらしは、東南アジアの海や川、森と密接につながっている。報告書の指摘と忠告を、自分たちの問題として考えなければならない。

 「そう言われても、何をすればいいのかピンとこない」という声が聞こえてきそうだが、できることは少なくない。

 農水産物、木材、パーム油などにはそれぞれ、持続可能な生産と供給を認証する国際制度がある。企業はこの認証を受けたものを輸入する。消費者は少々値が張っても認証商品を求めるように心がける。食品や日用品を必要以上に買わず、特に食材は地元の旬のものを選ぶ。

 そうした積み重ねが、アジアの環境への負荷を軽くすることを認識したい。

 政府はこれまで、専門家を派遣したり、技術支援機関を国内に誘致したりして、IPBESの分析と評価に積極的に関わってきた。資金面でも加盟国の中で7番目の貢献をしている。引き続き「ご意見番」の活動をしっかり支えていく責任がある。

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