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 中国で9万人近い死者・行方不明者を出した四川大地震から10年が過ぎた。

 被災地の復興は急速に進んでいる。地震後の3年間で投入された復興資金は少なくとも15兆円。数百万戸の公共住宅が建築され、大規模な移住政策も進められた。今や被災地の一部は保存され、観光地としてにぎわっている。

 「中国共産党の強固な指導の下、世界に注目される復興成果を収めた」。習近平(シーチンピン)国家主席は10年の節目に、そんな自画自賛のメッセージを発表した。

 しかし、本当にそうなのだろうか。習氏は心から「復興成果」を誇っているのだろうか。

 思い出すのは、学校の校舎が各所で完全倒壊し、多くの子どもたちが亡くなった悲劇だ。周辺の建物の多くは倒れなかったため、校舎だけが倒壊したのはなぜかとの疑問が生じた。

 親たちは党幹部の腐敗行為に絡んだ手抜き工事を強く疑い、今も徹底した原因の究明を求めている。ところが、共産党政権はこうした声に応えて真相の解明を進めるのではなく、逆に親たちの訴えを強引に抑え込もうとしてきた。

 被災者たちが集団で地元当局を相手に裁判を起こす権利を奪い、海外メディアの記者との接触を強引に妨害する。いずれも政権に批判の矛先が向くことを避けるための「口封じ」の措置にほかならない。

 まだまだ隠された事実がほかにもあるのではないか、との疑念も根強い。

 被災地の原子力施設で福島第一原発と「類似の危険な状況」が生じていた、と中国政府幹部が中国メディアに明らかにしたのは昨年。被災地には軍の施設などがあったが、被災状況は公表されておらず、住民の避難なども行われていなかった。

 詳細は不明だが、もし言葉通りの深刻な状況が生じていたのだとすれば、恐ろしいとしか言いようがない。特に原子力に関わる事態であれば、影響は大きい。中国の人々に対してはもちろん、国際社会に対しても、中国当局は十分な説明責任を果たしていない。

 一方、中国では日本における防災の取り組みに対して関心が高まっているという。防災教育の分野などでは今後も、日本ができる協力は少なくない。

 ブルドーザーによる復興の時期はとっくに終わっている。共産党政権に求められるのは、被災者一人ひとりの思いに向き合う姿勢である。ましてや、その声を無理やり消し去るようなことは決してあってはならない。

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