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 新たなゴールをめざす動きが国外で広がるのを横目に、従来の道にしがみつく。大局を見誤っていると言うほかない。

 新しいエネルギー基本計画の案を経済産業省がまとめた。「これまでの基本方針を堅持する」とうたい、今の計画を踏襲する内容だ。事業環境が厳しい原発や石炭火力を従来通り、「重要なベースロード電源」と位置づけた。

 世界では、エネルギーの供給や使い方に構造的な変化が起きつつある。太陽光や風力などの再生可能エネルギーが化石燃料に取って代わる「脱炭素化」や、規模が小さい発電設備を蓄電池などと組み合わせ、効率よく地産地消する「分散化」など、影響は社会に広く及ぶ。

 それなのに旧来の方針に固執して、変革に対応できるのか。世界の流れから取り残されないか。疑問や懸念は尽きない。

 この計画案は認められない。

 ■電源目標は非現実的

 基本計画は、エネルギー政策の中長期的な方向性を示すもので、政府が定期的に見直している。今の計画が閣議決定された14年以降、内外で起きた変化は枚挙にいとまがない。

 再エネは技術革新とコスト低下が進み、先進国や新興国で普及が加速した。地球温暖化対策のパリ協定が発効し、温室効果ガスの排出が多い石炭火力は逆風にさらされている。原発は、福島の事故を受けた安全対策の強化などの影響でコストが上昇し、先進国を中心に退潮傾向が強まった。

 ビジネスの動きも速い。投資や技術開発は、再エネと送電や電力制御、蓄電などの分野に集中し、巨大な市場が生まれている。日本は出遅れ気味だ。

 それでも、経産省は「大きな技術的な変化があったとは思えず、大枠を変える段階にはない」(世耕弘成経産相)という。認識違いも甚だしい。

 そもそもの誤りは、現計画の下で経産省が15年に決めた電源構成の目標を受け継ぎ、「確実な実現へ向けた取り組みを強化する」とした点だ。

 この目標は、30年度時点で原子力と再エネがそれぞれ発電量の2割ほどを担うと想定する。原発は30基程度を動かす計算で、これまでに再稼働した8基を大きく上回る。多くの古い炉の運転延長や建て替えも必要で、専門家らから「非現実的」という批判が相次ぐ。一方、再エネは達成が射程に入りつつあり、目標値の上積みを求める声が与野党から出ている。

 基本計画が描く将来像は内外の潮流から大きくずれており、変革期の道標たり得ない。まず目標自体を見直すべきだ。原発の比率を大幅に下げ、再エネは逆に引き上げる必要がある。

 ■原発のまやかし温存

 個別の分野も問題は多い。

 焦点の原発は現計画と同様、基幹電源として再稼働を進める方針と、「依存度を可能な限り低減する」という表現を併記した。しかし実際には、政権は再稼働に重きを置いている。なし崩しの原発回帰や、放射性廃棄物の処分問題や核燃料サイクルなどでその場しのぎが、さらに続くことになる。

 政権は、原発を取り巻く状況や、再稼働反対が多数を占める世論の厳しさに向き合うべきだ。国民の目をごまかしながら原発頼みを続ける姿勢は、根本から改めねばならない。「依存度低減」を掲げる以上、その具体化を急ぐ責任がある。

 再エネについて、「主力電源化」をめざす方針を打ち出したのは当然だが、計画が触れた具体策は、すでに検討されているものにとどまる。海外より割高なコストなどの障害を克服する「次の一手」が求められる。

 これまでのエネルギー政策は「安定供給」を錦の御旗とし、継続性を重視してきた。ただ核燃料サイクルのように、失敗や不合理が明白でも認めず、路線を転換しない悪弊も目立つ。

 今回の計画見直しでも、経産省は早々に「骨格維持」を打ち出し、議論にたがをはめた。発展途上の再エネには慎重な見方を変えず、多くの難題を抱える原子力や石炭に期待をかけ続ける姿勢は、惰性や先送り体質の表れではないか。

 ■新時代の展望を開け

 将来を見通すのは難しいからこそ、多角的で透明性の高い政策論議が重要だ。すでに外務省は非公式の折衝で、再エネ比率の大幅な引き上げを求めたという。環境省も石炭の積極活用に批判的だ。省庁を超えて徹底的に議論しなければならない。

 政治の役割も大きい。法律上、政府が基本計画を決めた後に国会は報告を受けるだけだが、十分ではない。専門家の意見を聞き、集中的に審議するなど、関与を強めるべきだ。

 社会の活動や暮らしの基盤となるエネルギーの未来図と針路を描き直す。そのために必要な政策を練り上げる。持続可能で説得力のあるメッセージを国民に発しなければ、新しい時代の展望は開けない。

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