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 中国と台湾の関係は、アジア太平洋地域の情勢を占う最も重要な問題の一つである。

 その一方の当事者である台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統が、きのうで就任2年の節目を迎えた。任期4年の折り返し点である。

 この間、中国との関係をめぐる対応は穏当だった。あくまで「現状維持」を掲げ、対立を避けた政権運営は評価できる。

 ところが最近、そこに若干の変化がみえる。自らが所属する民進党の党派色を前面に出してきた。台湾独立を掲げる党だけに、中国を刺激している。

 蔡氏が行政院長(首相)に起用した頼清徳(ライチントー)氏は「台湾はすでに独立国家だ」と述べ、中国からの批判を招いた。

 台湾では11月に統一地方選がある。政権にとって2020年の次期総統選に向け、前哨戦的な意味合いを持つ。その支持集めをねらって台湾の独立心をあおるのは、危うい。

 もちろん、台湾にさまざまな圧力をかける中国の強硬さは非難されるべきである。世界保健機関への台湾のオブザーバー参加は今年もかなわなかった。

 1千発を超えるとされる台湾向けミサイルに加え、空母や戦闘機が台湾の周りを回るなど、軍事的な圧迫を強めている。

 安全保障環境を不穏にしている第一の責任は中国にあり、習近平(シーチンピン)政権がそれを改めねばならない。中台問題は、平和的な対話による歩み寄りを重ねるしか解決の道はない。

 ただ一方の蔡氏も、これまでの抑制的な姿勢を崩すべきではない。「強い軍隊」の方針を表明し、トランプ米政権の支援を求めているが、軍拡競争では持続的な安定は築けない。

 蔡氏が維持してきたのは、中国と台湾という異なる体制が存在する「現状」であると同時に、台湾が独立を宣言しない「現状」でもあったはずだ。

 経済も軍事も肥大化する中国を前に、台湾が何もしなければ現状を維持できず、中国にのみ込まれてしまうとの危機感があるのは理解できる。

 しかしだからといって、自ら現状を変えるかのような言動で緊張を高めては、展望はひらけない。蔡氏自身、「力くらべ」には意味がないと認めている。むしろ台湾がめざすべきは、中国にない自由と民主主義を実践する政治の強靱(きょうじん)さを世界に示し続けることだろう。

 政権交代が当たり前になり、経済的繁栄と現状維持を志向する民意を尊ぶ台湾社会の成熟ぶりを、国際社会は認めている。中国もそれを力でつぶすことは決して出来ないはずである。

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