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 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を、政府は今国会中に成立させる構えだ。安倍首相の強い意向が背景にあるとされる。だが、国民的な合意が整ったとは到底言えない。

 朝日新聞は社説で、まずギャンブル依存症の対策を審議すべきだと主張してきた。その点で自民、公明両党が日本維新の会と共に、依存症対策基本法案を衆院に出したのは理解できる。

 しかし、それと同時に今日にもIR実施法案の審議に入るというのでは、成立ありきの意図が明らかだ。強引な手続きに走ってはならない。

 自民の森山裕国対委員長は「依存症対策をまず審議し、国民が安心する形でIRの審議ができればいい」と述べた。それならば、その対策が本当に国民の安心できる内容になるのか、まず見せるのが筋だろう。

 一貫性のなさが際立つのが、公明である。一昨年のカジノ解禁法の採決では山口那津男代表が反対するなど、慎重な立場だった。ところが今は「来年になったら統一地方選や参院選に影響する」との理由で、今国会成立を容認する声があるという。自党本位の理屈でしかない。

 依存症対策の審議で詰めるべきことは多い。

 自民などの法案では、医療体制の整備や社会復帰の支援を国と自治体に義務付け、対策を考える際は関係者会議の意見を聞くとする。委員には依存症の家族や有識者らを選ぶという。

 問題はこうした仕組みが機能するかだ。相談・治療体制を担う専門家は足りているか。予防知識を普及するため、学校や自治体の体制は十分か。形ばかりのものにしないためには、一つずつ丁寧な議論が必要だ。

 厚生労働省によると、日本にはギャンブル依存症の疑いがある人が70万人いる。依存症対策は、放置されてきた問題への対処である。カジノができて本当に大丈夫なのか熟考すべきだ。

 「責任あるギャンブル」。業界には、そんな言葉がある。一部の「意志の弱い人」をケアしさえすれば、健全性を保てるという楽観的な見方であり、実に危うい。利益のための必要コストのように依存症を見なすのならば言語道断だ。

 体験者によると、カジノの快感と喪失感はパチンコの比ではない。金額に比例して脳が刺激され、やめられなくなるという。誰にでもリスクがあり、治療には膨大な時間を要する。

 国会は体験者の聞き取りから始めてはどうか。幅広い合意をみないまま政治が突き進めば、社会に重い禍根を残す。

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