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 年金、医療、介護などの社会保障給付費が2040年度に今の1・6倍の190兆円に達し、国内総生産(GDP)に対する比率は24%まで上昇する。政府がそんな推計を出した。

 消費増税を決めた12年の「税と社会保障の一体改革」の際に、団塊の世代が全て75歳以上になる25年度までの社会保障の姿を示したが、その先は展望してこなかった。実は65歳以上の人口は25年度以降も増え、現役世代は減る。消費税率を10%まで引き上げれば制度はもう安心、という状況ではない。

 今回の推計は、厳しい現実を直視する一歩だ。社会保障の給付と負担のあり方の再構築につなげなければならない。

 高齢者人口がピークを迎える40年代に向けた「ポスト一体改革」の議論の必要性は、以前から指摘されていた。ところが安倍首相の2度にわたる消費増税延期で、「消費税を10%にするのが先決」と封印されてきた。

 今回の推計は、そうした議論の出発点になり得る。

 だが、来年の統一地方選、参院選をにらみ、与党内には負担増を口にするのを避ける空気が広がる。近く決定する骨太の方針にも、新たな財政再建目標のもとで社会保障費をどの程度まで抑えるのか、具体的な数値目標は書き込まない方向という。

 社会保障の改革は中長期のテーマだとして、またも議論を先送りする口実に、今回の推計が使われるようなことがあってはならない。

 今回示された給付費は、今の制度や、医療・介護の計画をもとに割り出したものだ。これを賄うために税金や保険料の負担を増やすのか、それとも給付の伸びをもっと抑える方策を考えるのか。検討が必要だ。

 医療や介護の改革では、原則1割になっている75歳以上の医療費や介護保険の利用者負担を2割に引き上げる、軽度の医療や要介護度の軽い人向けのサービスを保険の対象から外すなどの改革が、すでに政府の審議会などで取りざたされている。実際にどこまで踏み込むのか。それによって税金や保険料の負担はどう変わるのか。負担と給付の全体像、選択肢を分かりやすく示すことが不可欠だ。

 推計は、医療・介護現場の深刻な担い手不足も浮き彫りにした。人材確保のための処遇改善にも財源が必要だ。制度を支える働き手を増やすため、高齢者や女性が働きやすい環境を整える方策も進めねばならない。

 合意の形成には時間がかかる。社会保障の議論からこれ以上逃げている余裕はない。

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