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 これほど短兵急に準備を整えるには、あまりに重すぎる首脳会談だったということだろう。

 来月12日に予定されていた米朝の首脳会談を中止すると、トランプ米大統領が決めた。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長あての、その旨の書簡を公表した。

 核の完全放棄を迫る米国と、最大限の見返りを求める北朝鮮。その合意をさぐる事前交渉が難航したのは間違いない。

 そもそも会談の開催を決めたのはトランプ氏の型破りな即断だった。しかし、長年に及ぶ敵対関係の終結を探る折衝が曲折するのは十分予想できた。

 米朝関係のあり方は、北東アジアの今後の安全保障を占う。肝要なのは、長期的に意義ある合意を築くことだ。来月12日の日程にこだわらずとも、この間に重ねた米朝間の交渉の実績は資産として生かせる。

 どうすれば朝鮮半島の非核化と冷戦構造に終止符を打てるか。その大局を見すえて今後も粛々と対話を続けるべきだ。

 中止の決定に至るまでには、米朝双方が自らの思惑で主導権争いをした跡がうかがえる。

 金正恩氏は中国との2度の首脳会談を経て、対米交渉に強気で臨む自信を抱いたらしい。一方的な核放棄を強いるなら、米朝会談を再考すると牽制(けんせい)した。

 トランプ氏も対抗して、会談の延期や中止の可能性に触れていた。その脳裏では、米国の秋の中間選挙に向けて、米朝会談が自らの手柄になり得るか否かを周到に計算したはずだ。

 北朝鮮に譲歩をして中途半端な合意をするより、当面見送った方が得策と考えたのか。あるいは、史上初の会談を実現する野心は保っており、今回の書簡も駆け引きの一環なのか。

 いずれにせよ、当面最も重要なのは、昨年のような武力衝突の危機を再現させないことだ。今回の中止決定をもって、これまでの対話機運から、対決局面に回帰してはならない。

 北朝鮮はきのう、一部の海外メディアを招いて核実験場を廃棄した。たとえ表面的な演出であっても、昨年まで暴挙を重ねた北朝鮮が和平のアピールに変化したのは前向きな進展だ。

 北朝鮮の柔軟性のなさは相変わらずだが、トランプ氏の異色の外交はさらに予測が難しい。この流動的な事態に直面している日本、韓国、中国、ロシアの周辺国の責任も重い。

 国連安保理決議による制裁体制は維持しながら、米朝双方に対話継続の働きかけを強める。そうした国際連携により、今後も忍耐づよく朝鮮半島の完全な非核化を追求するほかない。

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