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 安全保障を口実に、またも世界の貿易をゆがめるのか。暴挙を繰り返してはならない。

 トランプ米大統領が、自動車とその部品の輸入が米国の安全保障を脅かしていないか調査するよう、ロス商務長官に指示した。関税の大幅引き上げを視野に入れており、乗用車でいまの2・5%を最大25%に上げることを検討中だと報じられた。

 実施されれば、車の対米輸出が多い日本や韓国、ドイツには大きな打撃となり、世界経済を揺るがしかねない。

 今回の調査は、安保を理由に輸入制限を認める米通商拡大法232条に基づく。同じ条項を根拠にトランプ政権は今年3月、鉄鋼・アルミ製品に新たな高関税をかけたばかりだ。

 一方的な輸入制限を禁じる世界貿易機関(WTO)も、安全保障の観点から例外を認めている。ただし、戦時のような緊急事態を想定してのことだ。米国も82年にリビア産原油に発動して以降、とってこなかった。極めて異例の措置である。

 日本国内で生産する自動車の2割弱は米国へ輸出されている。米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結んでいるメキシコとカナダにも、日本企業の米国向け生産拠点がある。米国が高関税を導入すれば、太平洋をまたぐ自動車産業の供給網がずたずたになりかねない。

 米国で販売される自動車の約4割は輸入車で、高額の関税は米国の消費者も直撃する。高関税に反対する声は米国内にもあり、トランプ政権が本当に実施するかどうかは見通せないが、少なくとも各国との通商協議を有利に進める狙いがあるのは間違いない。

 鉄鋼・アルミでは、NAFTA再交渉中のメキシコとカナダを5月末まで高関税の適用対象から外しており、両国から譲歩を引き出そうとしている。自動車についても調査開始で両国に圧力をかけ、さらに譲歩を迫るのだろう。

 日本は6月にも、米国と新たな通商協議を始める。その場で米国から二国間の自由貿易協定(FTA)交渉などを求められる可能性がある。

 日本は鉄鋼・アルミの高関税について、ルールにのっとって米国に対抗措置をとる可能性があるとWTOに通知した。今後も毅然(きぜん)と行動し、米国に対して国際ルールに従うよう求めていくべきだ。

 欧州や韓国をはじめとするアジア各国、カナダ、メキシコなど利害を共にする国々と足並みをそろえ、粘り強く米国を説得していかねばならない。

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