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 ロシアとの前のめりの交渉姿勢を見直す時期に来ている。

 安倍首相がプーチン大統領と会談した。3月の大統領選で4選されて以降で最初の会談だったが、懸案の北方領土問題は解決の糸口さえ見えない。

 一昨年に両首脳が合意した目玉は、北方四島での「共同経済活動」だった。今回は民間の調査団派遣で合意したという。

 共同活動を日本は四島を引き寄せる足場にしたい意向だが、ロシアは自国の法律を適用する立場を崩していない。活動のための法的な枠組みづくりは、なお難航しそうだ。

 大統領選が終われば、プーチン氏は領土問題に正面から取り組めるのでは――日本側にはそんな期待もあった。

 しかし、ロシア大統領府は今回の会談直前に、両国がめざす平和条約について、北方四島が第2次大戦の結果、合法的にソ連領となったという認識を明記する必要があると主張した。

 かたくなさの背景となっているのは、ロシアの米国との関係の悪化だ。ロシア軍は国後、択捉両島をオホーツク海を守る戦略上の拠点と位置づけ、地対艦ミサイルの配備を進めてきた。

 プーチン氏は近年、日米同盟への懸念を繰り返しており、当面は領土問題で日本に歩み寄れる状況にないことは明らかだ。

 一方、日本政府も、ロシアによる4年前のクリミア半島併合について「力による現状変更」は認められないとし、主要7カ国と共に制裁を科してきた。

 一方で安倍政権は一昨年、ロシアへの経済協力担当相を新設した。同年末のプーチン氏訪日に弾みをつける狙いだったが、制裁相手に大胆な経済協力を進める政策は矛盾をはらむ。欧米から疑念の目を向けられるうえ、ロシアから足元を見られる結果にもなっている。

 朝鮮半島を含むアジア太平洋地域にロシアは大きな影響力を持つ。プーチン氏と対話し、信頼を築く必要性は理解できる。

 だとしても、領土の譲歩をせがむ姿勢を起点にした関係づくりには、おのずと限界がある。時に秩序を乱すロシアの対外姿勢には毅然(きぜん)と対応しつつ、地域の平和と安定という文脈の中に領土問題を位置づけるのが、あるべき交渉の姿だろう。

 共同経済活動さえ進めれば領土問題の解決につながるかのような幻想を振りまくことは、交渉の幅を狭めるだけだ。

 安倍首相は「私とプーチン大統領が終止符を打つ」と繰り返している。しかし、「なんとしても自らの任期中に」と功を焦るのは危うい。

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