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 未曽有の財政難をよそに防衛費を聖域化し、専守防衛の原則から逸脱する軍拡路線であり、到底認められない。

 自民党が、年末に政府が策定する新しい防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画への提言をまとめた。

 日本を取り巻く現在の安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」と位置づけ、防衛費の拡大を抑えてきた対GDP(国内総生産)比1%の突破を求めた。2%を目標とする北大西洋条約機構(NATO)の例を「参考」としている。

 5兆円台に膨らんだ防衛費を10兆円規模に倍増させようというのか。財源の議論もないまま大風呂敷を広げるのは、無責任の極みだ。

 もとより安倍政権の防衛費優遇は際立っている。4年連続で過去最大を更新し、昨年3月には安倍首相が「GDPの1%以内に防衛費を抑える考え方はない」と国会で明言した。

 あえて「2%」と明記したのは、首相の路線を後押しし、加速させる狙いだろうが、とても現実的とは思えない。

 敵基地攻撃能力の整備や、海上自衛隊の護衛艦「いずも」を念頭においた空母化の提言は、いずれも専守防衛の範囲を超える。陸海空に加え、宇宙、サイバーの領域も活用した「多次元横断(クロスドメイン)防衛構想」も打ち出した。

 安倍政権は、安全保障関連法で集団的自衛権の行使に道を開くなど、歴代内閣が踏襲してきた防衛政策を転換してきた。トランプ大統領が米国製兵器の購入を迫るなか、防衛費を大幅に増やせば、平和国家のさらなる変質は避けられない。

 安全保障は軍事だけでなく、緊張緩和をはかる外交とあわせて築かれるものだ。

 たしかに、中国海軍の強引な海洋進出に自衛隊が対処する必要はあろう。ただ、力に力で対抗するだけでは、かえって地域の緊張を高める恐れがある。

 北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を過剰にあおり、防衛力整備の追い風にしようとする姿勢も目にあまる。朝鮮半島の平和と安定に向け、関係国の外交努力が続くなか、ことさら軍備増強を打ち出す自民党の姿は、時代の流れに逆行している。

 国力の限界を踏まえ、軍事と外交を両輪とした戦略を構想することこそ、将来に責任をもつ政治家の役割だ。

 限りある予算の中で、政策の優先順位を誤ることなく、幅広い国民の理解を得る。提言からは、そんな視野の広さも丁寧な政治の営みもうかがえない。

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