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 正社員かそうでないかによって、賃金に不合理な格差を設けることは許されない。最高裁がそんな判決を言い渡した。

 労働契約法に明記されていることだが、何をもって「不合理」とするか、明確に線引きするのは難しい。同じ会社の制度をめぐっても、地裁と高裁の評価が分かれるなどの混乱があるなか、最高裁が一定の判断基準を示した意義は大きい。

 企業は、判決が説くところを理解し、自社の賃金体系に不備がないかを点検し、必要に応じて見直す必要がある。

 浜松市の物流会社をめぐる裁判では、給食や通勤など六つの手当の支給に差があることの当否が争われた。最高裁はうち五つを不合理と判断した。

 「長く働く正社員の意欲を高めるためだ」と会社側が主張していた皆勤手当についても、最高裁は有期契約の人に支給しない理由にはならないと述べた。仕事の内容や課せられた責任と関係のない格差は、原則として認められないという姿勢を明確にしたものといえる。

 一方、横浜市の運送会社に定年後再雇用された人が、仕事は同じなのに各種手当が削られ、以前よりも年収が2割下がったと訴えていた裁判では、最高裁はある程度のダウンは法律に違反しないとの立場をとった。

 年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、企業は希望する労働者を65歳まで雇うことが義務づけられている。そうした事情を踏まえたものだろう。

 ただし無条件で許されたわけではない。この会社では、再雇用した社員について、稼働状況に応じた歩合給を優遇したり、年金が支払われるまでの調整給を支払ったりしていた。

 判決は、これらの措置が組合との団体交渉を経て決められた経緯などにも着目して、合法との結論を導きだしている。全体としてバランスがとれ、社内で適正な手続きを踏むことが大切だというメッセージを、くみ取らなければならない。

 いまや非正規労働者は2千万人を超え、働く人の約4割に達する。だが賃金水準は正規の6割程度で、底上げは急務だ。

 国会で審議中の働き方改革関連法案は「同一労働同一賃金」の実現を柱の一つに据える。政府は、どのような格差は許されないかを具体的に示したガイドライン案を公表している。最高裁が示した考えとも重なる部分が多いが、さらに分かりやすい内容に進化させる必要がある。

 だれもが納得して働ける社会に向けて、今回の判決も参考にしながら議論を深めたい。

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