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 原発事故の被害は広範囲に及ぶ。そのことを福島の事故は如実に示した。電力会社は原発周辺、特に事故後に避難計画作りを義務づけられた30キロ圏内の自治体の声に耳を傾け、立地自治体と同様に対応するべきだ。

 中国電力が、建設中の島根原発3号機の稼働に向けた地元手続きにのり出した。新規制基準に沿った安全審査を原子力規制委員会に申請するための事前了解を、立地自治体である松江市と島根県に求めた。

 3号機は福島の事故前にほぼ完成しており、19年前半には安全対策措置が終わる予定という。福島の事故後、再稼働ではなく新たに動く原発の第一号になる可能性があり、原発の運転期間についての「原則40年」ルールに従えば、2060年ごろまで稼働する計算になる。

 全国で唯一、県庁所在地にある島根原発の30キロ圏内には松江市周辺の島根県内3市に加え、鳥取県の境港、米子の両市も含まれ、約47万人が暮らす。

 鳥取県と県内2市は福島の事故が起きた11年、島根原発について周辺地域住民の安全確保を最優先する旨の協定を中国電と結び、稼働に際しては島根県・松江市と同じ手続きを鳥取県側にも取るよう求めてきた。

 今年4月には、3号機について県と2市がチームを作り、中国電の説明を受けながら安全性の検証を始めていた。稼働へと動き出した中国電に対し、平井伸治・鳥取県知事が「かなり地元は混乱している。このような進め方に戸惑いを覚えている」と苦言を呈したのは当然だ。

 電力会社が自治体と結ぶ安全協定は、原発の新増設や重要な設備の変更について、事前了解の対象を立地市町村とその県に限る例が大半だ。

 しかし、日本原子力発電の東海第二原発の再稼働問題では、立地自治体の東海村と茨城県に加え、水戸市など30キロ圏内の周辺5市も事前了解の対象とする安全協定が今春に結ばれた。

 島根原発についても、島根、鳥取両県と30キロ圏内の6市による事前協議を求める声が、一部の自治体にある。中国電は、30キロ圏内の全ての自治体を「地元」と考えるべきだ。

 九州電力の玄海原発3号機の再稼働では30キロ圏内の3県8市町のうち4市が反対したが、原発がある佐賀県玄海町と同県の同意で手続きが進められた。

 溝口善兵衛・島根県知事は、鳥取県側も含めて周辺自治体の意見を聴く意向を示している。松江市とともにそれぞれの議会に近く諮る予定だが、玄海原発の例を反面教師としてほしい。

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