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 安倍政権がまたひとつ、戦後日本の防衛政策の転換を画策している。専守防衛の原則を踏み外す空母の保有である。

 2015年に就役した海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」は空母のような甲板を持ち、多くのヘリを一斉に運用できる。設計段階から戦闘機を載せる空母への改修が想定されていたが、3月以降、政府・自民党内の動きが相次いで表面化した。

 まず小野寺防衛相が国会で、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの搭載を視野に研究中であると初めて認めた。4月には防衛省が米軍の後方支援を目的とする調査報告書を公表した。

 政府の動きを後押しするように、自民党は年末の防衛大綱策定に向けた先日の提言で「多用途運用母艦」の導入を打ち出した。「専守防衛の範囲内でさまざまな用途に用いる」としているが、攻撃力を格段に高めた空母であることは疑いない。

 空母の保有は、旧海軍の伝統を受け継ぐ海上自衛隊の長年の「悲願」でもある。防衛省は今も、研究段階であって具体的な検討はしていないという立場だが、「動く航空基地」の実現に向け、水面下で着々と準備を進めている。

 歴代内閣は憲法9条の下、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機の保有は認められないとの見解を踏襲してきた。

 防衛省内には、離島防衛が目的なら「攻撃型」空母に当たらないとの考えもあるが、攻撃と防御の線引きはあいまいだ。安全保障関連法によって世界のどこにでも展開し、米軍の発進拠点となり得る。専守防衛の枠内に収まるわけがない。

 かねて安倍首相は、専守防衛に懐疑的な姿勢をとってきた。2月の衆院予算委員会で、首相はこの方針を「堅持する」としつつ「純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい現実がある」「相手からの第一撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねないものだ」と語った。

 だが専守防衛は、再び日本が他国の脅威とならないという国際的な宣言でもある9条とあいまって、東アジアの軍事的な緊張を緩和する役割を果たしてきた。なし崩しに転換すれば、周辺国との間で不毛な軍拡競争を招く恐れがある。

 防衛省内にも「空母を持つ資金的・人的余裕はない」との慎重意見がある。軍事と外交を両輪とし、限られた予算の中で、どのように地域の平和と安定を確保するか。大局に立った戦略を構想すべきだ。

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