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 働き方改革関連法案が自民、公明、日本維新の会、希望の党などの賛成多数で衆院本会議で可決され、審議の舞台が参院に移る。

 一定年収以上の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)への疑問や不安はいまだ払拭(ふっしょく)されていない。本来の改革の柱である残業時間の罰則付き上限規制や同一労働同一賃金の議論も不十分なままだ。

 世論調査では今国会で成立させる必要がないという声が6割で、過労死で家族を失った人たちからは法案に反対の声が上がる。これでは誰のための改革か、わからない。原点に返り、法案を見直すべきである。参院での徹底審議を求めたい。

 衆院では高プロの問題点の指摘に多くの時間が割かれた。厚生労働省のずさんな労働実態調査の問題や、野党の追及を逃れることに終始する加藤厚労相の姿勢にも批判が集まった。その結果、多様な論点が十分に議論されたとは言い難い。

 例えば法案の目玉である残業時間の規制。これまで労使が協定を結べば事実上無制限だった残業時間に、新たに罰則付きで上限を定める。しかし繁忙月は「100時間未満」という上限に対し、労災認定の目安とされる「過労死ライン」の100時間ギリギリまで働かせることを認めるのか、との批判がある。この上限案が妥当なのか。上限いっぱいまで働かせることにならないよう、政府は企業にどう促していくのか。

 同一労働同一賃金にしても、政府は正社員の待遇を引き下げて低い方に合わせるのではなく、非正規で働く人の底上げを目指すと説明する。それをどうやって担保するのか。

 働き方改革は8本もの法案からなる。その中に、長時間労働の是正など働く人たちの健康や暮らしを守るための改革と、経済界が求めてきた規制緩和である高プロという、方向性の異なるものが混在している。

 それぞれ重いテーマを一括で審議することに無理がある。やはり高プロを切り離し、一つずつ丁寧に議論するのが筋だ。

 長時間労働のすえ過労自殺で亡くなった電通の新入社員、高橋まつりさんの母と昨年2月に面会したのと対照的に、安倍首相はいま、高プロの削除を求める過労死遺族との面会をかたくなに拒んでいる。政策の中身に対する要望なので担当省庁が対応すべきだという理屈だが、高プロ削除の決断は首相にしかできない。誠実に向き合い、耳を傾けるべきだ。

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