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 国民共有の財産で、歴史の記録でもある公文書を改ざんし、廃棄する。国民を代表する国会でうその答弁を重ね、立法府による行政監視の役割を骨抜きにする。その問題の重大性に、この政権が真摯(しんし)に向き合っているとはとても言えない。

 ■一部官僚に押しつけ

 財務省がきのう、森友学園との国有地取引をめぐる決裁文書の改ざんなどに関する内部調査の結果と、関係者の処分を発表した。

 一連の行為は国有財産を所管する理財局内だけで行われ、麻生財務相や事務次官には一切報告がなかったという。当時の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長が廃棄や改ざんの「方向性を決定づけた」と認定され、停職3カ月相当とされたが、トップの麻生氏は1年分の閣僚給与の自主返納だけで続投を表明した。

 責任を官僚組織の一部に押し込め、問題が政権全体に及ぶのを回避しようという狙いは明らかだ。国有地の大幅値引きの経緯は今回の調査の対象外であり、疑惑の全容解明には程遠い。これでは、失った信頼を回復するどころか、政治不信に拍車をかけるだけだろう。

 一方で報告書は、交渉記録の廃棄は「私や妻が関係していれば、首相も国会議員も辞める」との安倍首相の国会での言明の直後に始まったとした。首相は自らの答弁は無関係と説明してきたが、首相を守る意図がはっきりしたことで、より重い政治責任を負ったことになる。

 改ざんや廃棄の動機については、佐川氏の答弁とのつじつま合わせや、国会で野党に追及材料を与えないためとされた。国会軽視も甚だしい。昨年2月にこの問題が表面化して以来、1年以上にわたる国会論戦の前提を無にするものだ。

 ■麻生氏は即刻辞任を

 麻生氏は再発防止に全力で取り組むとして、職にとどまる意向を表明した。首相も「麻生氏に責任を全うしてもらいたい」と支持した。しかし、この問題を軽視する発言を繰り返してきた麻生氏の下で、行政への信頼回復や財務省の抜本的な立て直しが実現できるとは到底思えない。麻生氏は速やかに辞任し、新しい大臣の下で財務省は出直すべきである。

 一連の不祥事はすべて麻生氏の下で引き起こされた。改ざんの舞台となった近畿財務局では、自殺者まで出ている。報告書は冒頭で、ようやく今回の行為を「改ざん」と認めたが、麻生氏はつい先週まで、「悪質なものではない」として、「書き換え」が適当との認識を示していた。

 きのうの会見でも、佐川氏が明確に改ざんや廃棄を指示した事実が確認できず、その発端が未解明な点をただされると、「それが分かりゃ苦労せん」などと、ひとごとのような発言に終始した。

 このような大臣には、問題を解決する能力も資格もない。同じような不祥事が民間企業で起きていれば、トップが責任をとって辞任し、調査は第三者機関に委ねるのが当たり前だ。

 麻生氏の続投を許した首相の責任もまた重大である。秋の自民党総裁選で3選を果たすためには、党内第2派閥を率いる麻生氏を敵に回せない。政権発足以来、副総理として支えてくれた麻生氏が閣外に去れば、政権・与党内の力関係が不安定になる――。政治的なけじめより、そんな自己都合を優先させた判断ではないのか。

 ■1強長期政権の弊害

 加計学園の獣医学部の新設をめぐる問題でも、政権の説明を覆す新しい文書や証言が相次いでいる。

 森友・加計の両問題に共通するのは、1強体制の長期政権の下、公務員が全体の奉仕者としての使命を忘れ、時の首相に尽くす姿である。そして、首相に近い人物に特別な便宜が図られたのではないかという、行政の公正性に対する根深い疑念だ。

 政治への信頼はすべての政策遂行の基礎である。この土台をなおざりにした政権運営はやがて行き詰まると首相は自覚すべきだ。

 先週、大阪地検特捜部が佐川氏ら関係者全員を不起訴とする処分を発表した。きのうの財務省の報告を受け、与党内からは「これで区切りがついた」と幕引きを期待する声が上がっている。見当違いも甚だしい。

 行政府に自浄能力が働かないのなら、立法府こそが行政監視能力を発揮するしかない。先の証人喚問で「刑事訴追のおそれがある」と証言を拒んだ佐川氏の再喚問は不可欠だ。首相の妻昭恵氏にも公の場で説明してもらいたい。

 国の中枢でうそがはびこり、それを正すことができない。しかるべき立場にある人間が責任を引き受けない。それは、一政権の問題を超えて、人々のモラルに悪影響を与え、社会全体の規範意識を掘り崩しかねない。

 政治の退廃に歯止めをかけられるか、いまその岐路にある。

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