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 心配された事態はとりあえず避けられた。だが、これからも監視を怠ることはできない。

 先般まとまった政府の規制改革推進会議の答申のことだ。放送分野をめぐる記載がどうなるかに関心が集まっていた。

 放送番組について、政治的に公平▽事実をまげない▽多角的に論点を明らかに――と定める放送法4条の撤廃が取りざたされたからだ。こうした規制のないネット番組で存分に語り、手ごたえを感じた安倍首相の意向が背景にあるとされた。

 だがフェイクニュース対策が課題になっている時代に、その逆をゆく構想とあって批判や疑問が噴出した。答申に盛りこまれなかったのは当然である。

 これを機に、改めて放送法4条に関する正しい認識を、社会で共有する必要がある。

 この条文は、放送事業者が自らを律し、良質な番組をつくるための倫理規範だというのが、学界や放送現場で定まった考えだ。戦前の放送の反省にたち、民主社会をおおもとで支える言論や報道を、より豊かなものにする基本の心構えといえる。

 ところが政府自民党は、これを放送局を攻撃・牽制(けんせい)する根拠に使ってきた。その傾向は現政権でいっそう強まる。高市早苗元総務相が、4条違反を理由に電波を停止する措置もあると述べたのは記憶に新しい。

 一方で、この条文があると政治の側ができる口出しも限界を伴う。そこで浮上したのが「撤廃」の考えだ。4条を口実にした介入も、一見その逆をいく撤廃論も、放送を自分たちにとって都合のいい道具にしたいという政権側の思惑が、根底にある点において変わりはない。

 ネットの伸長は著しいが、放送がもつ影響力は依然大きい。だからこそ、その自主自律をおびやかす動きには、今後も目を光らさなければならない。

 今回の答申は、通信技術の進展を受けて、放送番組のネット同時配信を「避けて通ることのできない課題」に挙げた。

 認識に異論はないが、実現には設備投資や運営に多くの資金が必要だ。安易に道を開けば、受信料に支えられて強い財政基盤をもつNHKがますます肥大化し、民放は埋没することになりかねない。それもまた、多様な言論のうえになり立つ民主主義を揺るがす事態だ。

 昨年の受信料訴訟判決で最高裁は、NHKと民放の二本立て体制を、それぞれの長所と短所を補いあい、放送によって国民が利益を享受する仕組みと評価した。その趣旨を踏まえた法や制度の整備こそが求められる。

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