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 安倍首相はまたも、日米は「完全に一致」「常にともにある」と繰り返したが、米国頼みの外交を続けていては、時代の流れに取り残されかねない。

 首相が4月に続いて再び訪米し、トランプ大統領と会談した。シンガポールで12日に開かれる史上初の米朝首脳会談を前に、対北朝鮮政策をすり合わせる狙いだ。

 トランプ氏は会談後の共同記者会見で、朝鮮戦争の終結に向けた合意文書への署名を調整中と明かした。当面は制裁を解除しない考えも示したが、北朝鮮を取り込む方向にかじを切ったことは間違いない。

 日米の首脳が緊密に連携することは重要である。ただ、日本が主体的に外交を構想し、近隣諸国との足場を固めたうえでなければ、予測不能のトランプ流に振り回されるだけだ。

 共同会見で首相は、拉致問題の解決に向け、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談に強い意欲を示した。米朝対話に前のめりのトランプ氏に押され、軌道修正を図ったのだろう。

 安倍政権は北朝鮮の脅威をあおり、防衛政策の転換や防衛力増強を進めてきたが、米国一辺倒、圧力一辺倒の外交は、はしごを外された。これまでの外交の効果と限界を冷徹に分析し、新たな現実に即した戦略を練り直さねばならない。

 だが、現状では、東アジアのあるべき将来像を示すことすら出来ていない。米国の動きに応じて態度を変えるようでは、地域の平和と安定を築く当事者としての自覚が問われる。

 この間の首相の対米追従ぶりは際だっていた。「対話のための対話は意味がない」と北朝鮮への「最大限の圧力」を主導していたのに、米朝首脳会談の開催が決まると「大統領の勇気を称賛したい」と一変した。

 驚いたのは、トランプ氏が会談中止を発表した際、世界で一国だけ「支持する」と表明したことだ。首相の本音はそこにあったのだろう。ところが、会談が復活すると「会談の実現を強く期待している」。無節操と言うほかない。

 これが、首相が口癖のように繰り返してきた「日米は100%ともにある」の内実だ。

 安全保障に経済を絡めるトランプ氏は、対日貿易赤字の縮小に照準を合わせ、巨額の米国製兵器などの購入を日本に迫っている。北朝鮮問題で対米依存を強めれば、足もとを見られるばかりではないか。

 米国に従うだけで、日本の利益は守れない。その当たり前の事実を首相は認識すべきだ。

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