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 懸命に生きていた幼い命を、何とか救う機会はなかったか。自治体、児童相談所、警察の対応に問題はなかったか。検証すべきことがたくさんある。

 船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)がノートに書き残した内容が、社会に大きな衝撃を与えている。親にいいつけられたことをできなかった「反省」と「謝罪」が、ひらがなでつづられていた。食事を満足にさせてもらえなかったといい、3月に亡くなった。

 以前住んでいた香川県で、結愛ちゃんは父親の暴力を理由に2回、児相の一時保護を受けた。まず思うのは、この時点で児童養護施設などに入所させて親と距離を置く判断はできなかったか、ということだ。

 一家は今年1月下旬から東京都目黒区で暮らし始めた。

 香川からの連絡で、東京の児相もリスクを抱えた家庭であることを把握。2月に家庭訪問して様子を確かめようとしたが、本人に会えなかった。母親の様子から児相と距離を置きたがっていると判断し、関係づくりを優先しようと考えたという。

 子どもを守るため、直ちに権限を行使して親と引き離すべきか。それとも親との信頼関係を粘り強く築き、虐待をやめさせるよう支援を続けるほうが、その子のためになるか。児相にとって難しい判断だろう。

 ただ、結愛ちゃんは東京では幼稚園などに通っていなかった。第三者の目が届かない環境にずっといては異変を察知しようがない。この事例では、児相は警察の協力を得て、家庭への立ち入り調査に踏み切るべきだった。そうみる専門家もいる。

 香川と東京の児相の間で、どんな引き継ぎがなされていたのか。深刻さはどの程度共有されていたのか。警察とはどう連携をとるべきだったのか。

 有識者でつくる都の児童福祉審議会などで、事実の経緯と関係者の認識を解き明かし、教訓を導きだしてもらいたい。

 児相の業務の多忙さはかねて指摘されている。問題家庭と向き合う児童福祉司の人数はこの10年間で1・4倍になったが、その間に相談件数は3・3倍になった。努力にも限界がある。今回の事件を受けて、小池百合子都知事は児相の増員と専門職の育成を表明した。むろん都だけの問題ではない。国をあげて取り組みを急ぐべきだ。

 「ほんとうにもうおなじことはしません」。結愛ちゃんはノートにそうつづっていた。謝るべきは大人社会のほうだ。失われた命に再発の防止を誓い、虐待されているすべての子を、救い出さなければならない。

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