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 先生が忙しい――。学校現場からは悲鳴に近い声が上がり、朝日新聞デジタルのアンケートにも厳しい実態が多く寄せられています。「脱ゆとり教育」やいじめ問題への対応など、先生の仕事は増えています。このままでは、子どもたちの学びへの悪影響も心配されます。有効な解決策はあるのでしょうか。みなさんと考えます。

 ■能力や意欲ある人ほど

 アンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

    ◇

 ●「理不尽な保護者からの要求、非常識な行動や発言には対応が難しい。教員の一番の仕事は学習指導であり、子供の健全な成長を支援することである。より良い仕事になるようにと考えると、どうしても勤務時間内で仕事が終わることはない。今の働き方改革の話題が出るはるか以前から時間外勤務を毎日やってきたが給与面で仕事に見合う保証はないし、頑張ったからといってそれに見合う賃金アップがないのが実情だ」(学校の先生 滋賀県・50代男性)

 ●「1人担任制ではなく、学年での担任制、曜日担任制などにして1人の負担を減らし、全員で問題を共有して、休みの取りやすい仕事環境にしてほしい。新しい発想で変えていかなければならないと思う」(学校の先生 千葉県・40代女性)

 ●「部活の業務は本来、教員の仕事とは言えない内容も多いが、長年担ってきたためやめるにやめられない状態となっている。大人が関わることは最小限にし、やめるものはやめ、生徒が主体となってやれる範囲の活動に戻すことがよいと思う」(学校の先生 宮城県・30代男性)

 ●「昨年、新卒で1年間、小学校の講師として担任をしました。長年の夢で、子どもたちとの関わりも非常に楽しくやりがいのある仕事だと感じました。しかし転職を決意したのはやはり労働時間の長さ。勤務は8:10―16:40でそれ以外の時間は残業代も出ませんが、朝早くから夜遅くまで働くのがつらかったです」(元学校の先生 新潟県・20代女性)

 ●「昔から教師になりたかったので、そういう意味では幸せです。しかし一労働者としては、最悪です。仕事は増える一方。学習指導要領は削除はなく追加ばかり。毎日、0:00すぎの帰宅です。周りも大変なんだから、俺も昔は……の精神論ばかり独り歩きしています」(学校の先生 愛知県・20代その他)

 ●「教員の指導力格差を強く感じています。仕事のできる教員は忙しく、仕事のできない教員は時間を持て余して話ばかりしている。つまり非効率でバランスを取っているようにさえ感じます。若手は反面教師を職員室で学びます」(学校の先生 千葉県・30代男性)

 ●「先生が少しふらつきながら授業をしてくれていて、みんな大丈夫かと問いかけるとテストの採点を提出する期限があるらしく、夜遅くまでやっていたと言っていて、先生も大変だと思った」(児童・生徒 神奈川県・10代女性)

 ●「教師自身は忙しいと言いますが、民間企業から見れば『身分の安定した高給』であるだけ甘い。生徒が減ったら少人数学級に、忙しいから増員に、なんて言えるなんて信じられません。お客様が減ったけど給料も人も減らすな、なんて民間企業で言ったらクビか左遷ですよ」(元保護者 京都府・60代女性)

 ●「児童・生徒のことをよく考えるやる気のある先生は、忙しく、生徒より、自分のことを第一にする先生は、要領がいいために、自分の好きなことをできる時間を確保できているように思う。両者の多忙か否かの差が大きいのではと思います」(保護者 沖縄県・50代女性)

 ■7時出勤、終わらぬ仕事

 東京都内の公立小学校の女性教諭(39)は、毎朝7時には出勤します。毎週水曜がノー残業デーで、午後5時には退勤するように言われています。それでは仕事が終わらず「同僚の多くが朝7時ごろから出勤して授業の準備をしている」といいます。

 昼に給食をかきこむように食べると、すぐ教室で宿題の丸つけです。「堂々としたいい字だね」などと全員のノートにコメントも書き添えます。「ちゃんと見ているよと伝えたい」。新任の時から続けている「最後のとりでみたいなもの」です。

 補習を受けた子どもが帰った午後4時半以降は、若手教員に教材研究を指導したり、学校での様子に不安のある子どもや家庭とのやりとりを文書化したり。「以前より、細かく文書で残すことを求められるようになった」そうです。遅い時には、警備員が施錠して学校を閉める午後10時までに仕事が終わらないことも。

 週末は、苦手な英語を習っています。英語の教科化に伴い「楽しんで話す様子を見せて興味を持ってほしい」との思いからです。「英語の免許がなければいずれ教壇に立てなくなるのでは」との不安もあり、並行して大学の通信講座で中学校の英語の免許をとる勉強もしています。

 現在独身で、「結婚したら、家庭との両立は難しいだろう」と考えることもあります。遅くまで仕事をしていると、地域から「深夜まで学校の明かりがついていた」と言われ、管理職から早めの退勤を促されます。「塾のように勉強だけ教えればいいのか」と考える時もありますが、「割り切れない」と言います。「学力の向上だけではなく、子どもや保護者との関わりを通して育てていきたい。その気持ちで教師になったのです」

 (円山史)

 ■中学教員6割、過労死ライン超

 先生の忙しさは、文部科学省が昨年4月に発表した10年ぶりの教員勤務実態調査で改めて浮き彫りになりました。公立小中学校の教員は平均で1日11時間以上働き、小学校で3割、中学校で6割の教員が「過労死ライン」とされる「残業が月80時間」を超える実態が分かりました。

 「脱ゆとり」にかじを切った2008年の学習指導要領の改訂で小中学校では教える内容が増えました。06年度と比べると、授業と準備時間は小中で1日当たり30~35分増え、勤務の総時間が膨らんだ格好です。

 また、経済協力開発機構(OECD)が13年に世界34カ国・地域を対象に行った調査では、日本の中学教員が1週間に働く時間は最長で、平均の1.4倍に上りました。

 連合のシンクタンク「連合総研」が15年に行った調査では、週に60時間以上働く中学教員は86.9%と、建設業や製造業など他業種と比べ約2~26倍高いことも分かりました。

 文科省によると、全国の国公私立学校の教員数(16年度)は、小学校が約38万人、中学は約23万人。また、公立学校の教職員のうち、年間5千人前後が精神疾患により病気休職しています。急に代わりの教員が必要になっても、臨時教員が見つからず、授業が出来ない学校も出ています。17年5月時点で、全国で435人の教員が不足し、「多忙化で敬遠されている」との指摘もあります。

 (峯俊一平)

 ■重い授業の負担、正規教員増やして 小川正人・放送大学教授(教育行政学)

 なぜ教員の働き方改革が必要なのか。二つの視点から考えることができます。

 一つは労働問題です。「過労死ライン」を超えて働き、精神疾患などで休職する教員数の高止まりも指摘されています。他の職業と比べても高い割合で、現状を放置できません。

 もう一つは教育問題としての視点です。四つの教育系国立大学が行った「教員の仕事と意識に関する調査」(2015年)によれば、「授業準備の時間が足りない」と答えた教員は小学校で94.5%、中学で84.4%、「仕事に自信が持てない」先生は約4割に上ります。データから見えるのは、質の高い授業を提供する余裕はなく、個々の子どもに接する時間を確保するのも難しい実態です。

 また、学校が「ブラック職場」と呼ばれ、学校現場からは「優秀な人材が集まらなくなった」という声も聞きます。学校5日制や「ゆとり教育」が始まった02年度以降、離職者も増えています。多忙化の問題は教員の働き方にとどまらず、子どもたちにも影響し、義務教育の基盤を揺るがしています。

 日本の教員の長時間勤務の背景については、学習指導に加えて、生活指導、部活動など広い範囲の仕事を担っている点が指摘されていました。ただ、最近の調査では、授業やその準備など本来業務が主に増えていることが明らかになりました。

 正規教員を増やすのが最も効果的です。財政事情が厳しい中でも、可能な限りの教員定数改善を図ってほしい。文部科学省は部活や事務作業など本来業務ではない仕事を他の職員や専門スタッフ、地域の人に任せる方向で予算化していますが、数の確保とともに正規・定数化などの更なる充実が必要です。

 (聞き手・峯俊一平)

 ◇来週17日は「先生、忙しすぎ?:2」を掲載します。

 ◇アンケート「先生、忙しすぎ?」を12日までhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

 

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