朝日新聞社が始めた、アルバム・写真のデジタル化サービス「ニッポン写真遺産~思い出まるごとスキャン~」。大正時代の淡路島での貴重な写真が見つかり、地元の史料館で展示されることになりました。

 ■父が遺した、若き昭和天皇を迎える牛たち

 父が遺(のこ)した大正から昭和戦前期の写真約1千枚をデジタル化した、千葉県流山市の山尾信義さん(76)。カメラ愛好家だった父鶴雄さんは、山尾さんが小学校に入学した直後の1948年に58歳で他界した。山尾さんは30代半ばごろから、父の人生に思いをはせながら、写真をアルバムにまとめてきた。

 気になる写真が数枚あった。若いころの昭和天皇らしき人物が写っている。裏面に淡路島の軍当局の許可印が押され、父の署名と大正11(1922)年11月30日の撮影日が記されていた。乳牛を並ばせて要人の車列を出迎えているような光景も収められていた。

 「貴重な写真ではないか」と知らせを受け、ニッポン写真遺産事務局が調べたところ、当時は皇太子だった昭和天皇が、確かに淡路島を訪問していた。翌日付の大阪朝日新聞夕刊には「島民感泣 淡路島行啓」との見出しで、三原郡広田村(現兵庫県南あわじ市)の藤井煉乳(れんにゅう)工場を視察したことが載っており、「同社前に繋(つな)げる淡路産牛馬の逸物約三十頭にお目を留め……」とも書かれていた。

 兵庫県洲本市立淡路文化史料館に聞くと、同館所蔵の「東宮殿下淡路行啓記念誌(津名郡・三原郡教育会編、昭和5年)」「淡路之誇 上巻(片山嘉一郎編、昭和4年)」に、父の写真と同じシーンを別角度から撮影したコマが掲載されていた。

 父鶴雄さんはこの練乳会社に勤めていたが、勤務地は東京だった。「まだ珍しかったカメラを持つ父が、淡路の工場まで撮影に出向いたのだろう」と山尾さんは推測する。中には、撮影者がわからないものもあるが、島の歴史に残る貴重な写真が山尾さん父子の手で現代に引き継がれた。

 特に、乳牛が車列を出迎えるという、ほほえましい光景を収めたコマについては、史料館の堂角田(どうかくだ)龍治館長(45)も「初めて見た」という。島の主要産業である酪農・畜産業の歴史を物語る写真だとして、堂角田館長は「ぜひ、当館で開催する兵庫県政150周年記念展に展示させてほしい」。

 山尾さんは「喜んで」とこれに応じた。「埋もれていた写真に光を当てることができ、父も喜んでいるだろう。いい親孝行ができた」と話している。

 ■史料館で展示へ

 淡路文化史料館「兵庫県政150周年記念展」は30日から。記念展に関する問い合わせは同館(0799・24・3331)へ。(樋口慶)

 ■約4千枚がDVD1枚に

 「ニッポン写真遺産」は家庭のアルバムやプリント写真をお預かりしてスキャンし、画像データと一緒にお返しするサービスです。約4千枚のL判写真が、パソコンで閲覧できるDVD―Rディスク1枚に収まります。部屋の片付けやお子さんへの引き継ぎに便利です。自分史作りの準備にも最適。スマホで思い出を持ち運ぶこともできます。

 ■お宝写真お知らせ下さい

 アルバム・写真の発送時に、「歴史的にも貴重な写真ではないか」というものがありましたらお知らせ下さい。アルバムの該当ページや写真の裏面などにフセンを貼り、分かる範囲で撮影年月や撮影場所、撮影者やエピソードなどを記したメモを添えて下さい。改めてお客様に取材し、紙面やウェブサイトなどでご紹介することがあります。(寺腰忍)