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 福島で未曽有の大事故を起こした東京電力が、別の原発を動かすことを、認めるか。新潟の新知事は任期中に、重い判断を迫られる可能性が高い。住民の安全確保や不安の解消を最優先とし、主体的に対処する姿勢を貫けるかが問われる。

 新潟県知事選で、与党の支援を受けた花角英世氏が初当選した。野党5党が推した池田千賀子氏との接戦を制した。

 選挙戦では、東電が再稼働をめざす柏崎刈羽原発への対応が注目された。花角氏は池田氏と同様、再稼働に慎重な姿勢を示した。自民、公明両党は原発回帰の政策を進めているが、選挙戦では前面に出ず、再稼働問題や安倍政権批判の争点化を避ける戦術をとった。

 与党は知事選の結果を政権への追い風と受け止めているようだが、花角氏を選んだ民意は多様だ。おごらず、丁寧な政権運営に努めねばならない。

 一方、再稼働への事実上の「同意権」を持つ新知事にまず求められるのは、選挙での公約を実行することだ。

 花角氏は、前知事が進めた東電福島第一原発事故の原因や影響、事故時の避難方法に関する検証を引き継ぐと訴えた。検証結果をもとに再稼働の是非を判断する際、改めて知事選などで県民に信を問う考えも示した。

 新潟県では原発への不安が強い。朝日新聞が選挙中に行った世論調査では、再稼働反対が賛成の2倍以上となった。出口調査によると、花角氏は再稼働賛成派に加え、反対派からも一定の支持を得た。多くの県民の声を重く受け止め、検証作業を徹底することは、当然の責務である。

 再稼働に関して県がさらに考えるべき課題は多い。柏崎刈羽の周辺には豪雪地帯があり、実際に機能する避難体制を整えるのは難しい。東電社内で安全確保の意識や体制がどこまで改善されたかについても、国任せにせず、地元の視点でチェックする必要がある。

 福島の事故以降、新潟県は原発の安全について独自の取り組みを続けてきた。東電の「炉心溶融隠し」をあぶり出し、自治体の避難計画づくりで国の関与の不十分さに光を当てたのも、その成果だ。

 政権与党に支えられた新知事に対しては今後、再稼働を急ぎたい政府や東電などからさまざまな働きかけもあるだろう。それでも、独立した立ち位置で判断し、問題点を正す姿勢を保てるか。花角氏は、県民の視線が注がれていることを忘れてはならない。

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