[PR]

 大学などを出ないと安定した仕事につくのが難しく、家計の苦しい親のもとで育った子は、進学の機会に恵まれないまま、同じように低収入に陥る――。

 そんな連鎖を断とうと、所得の低い世帯に対し、大学・短大や専門学校の学費負担を軽くする施策が、近く政府の「骨太の方針」に盛りこまれる。

 格差の固定化を防ぐ意義ある取り組みだが、進学せずに働く若者への目配りも、あわせて忘れないようにしたい。

 日本は「学歴の再生産」の傾向が強い。階層や社会意識について研究している大阪大学の吉川(きっかわ)徹教授はそう指摘する。

 教授らのチームの3年前の調査では、短大をふくむ「大卒」の若者の5割は、父親も大卒だった。一方、中高や専門学校など「非大卒」の若者の8割は、父親も大学を出ていなかった。また、大卒の親の8割は「子どもに大卒以上の学歴を」と望むが、非大卒だと、そう考える人は6割を下回るという。

 生まれ育った家庭によって、子の進路選択が左右される実態が見える。学費負担の軽減はこれを正す手段の一つになろう。

 しかし、中高を卒業して直ちに社会に出る人には、恩恵は及ばない。この層にも光を当て、最低賃金のいっそうの引き上げなどを通じて、働く若者の労働環境の改善を進めなければならない。非大卒は地方ほど多く、都市と地方の格差を縮める役にも立つはずだ。

 高卒などの若者は資格を持つ人が少なく、学び直しや再挑戦の機会も乏しい。能力を高める場を充実させるのはもちろんだが、吉川教授は「大学新卒者を偏重するのを改め、同じ年代の高卒者を中途採用する枠を設けるよう、大企業や自治体に義務づけられないか」と話す。こうした踏みこんだ案も参考に、幅広く検討してみてはどうか。

 気がかりなのは、格差を容認する空気が、近年、社会に強まっていることだ。

 朝日新聞とベネッセ教育総合研究所が、公立の小中学校に通う子の保護者を対象に最近実施した調査では、豊かな家庭の子ほど良い教育を受けられる傾向を、「当然」「やむをえない」と答えた人が60%を超えた。

 00年代は40%台だったが、10年代になって大きく増えた。しかも大卒層ほどそう考える人が多い。階層による意識の亀裂が広がりつつあるのは心配だ。

 学歴や貧富によって与えられるチャンスに大きな差があり、考え方や価値観も割れる。この国を、そんな分断社会にしないための施策が求められる。

こんなニュースも