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 安倍政権が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長との首脳会談開催に向けて動き出した。

 北朝鮮は絶対的な指導者による独裁体制だ。問題対処を迅速に進めるうえでは、首脳個人との直接対話が有効である。

 とりわけ被害者家族に残された時間が限られている拉致問題について、金正恩氏本人にじかに行動を迫るのが近道だ。

 中国、韓国、米国が相次いで首脳会談を実現させたいま、遅きに失したとはいえ、日本も自らのトップ交渉の道を開くのは当然である。加速する融和の潮流を逃すことなく、日朝関係の抜本的な転機を探るべきだ。

 先の米朝首脳会談で、金正恩氏は日本とも話しあう意向を示し、拉致問題については「解決済み」という従来の主張をしなかった、とされている。

 あくまで伝聞情報であり、金正恩氏の真意はわからない。しかし、国際的な孤立からの脱却を真剣にめざすのだとしたら、日本との協議にも乗りだす可能性は十分考えられる。

 安倍政権は拉致問題の解決を最重要課題に掲げてきたが、今まで何の成果も出せていない。

 これまでの北朝鮮の不誠実な対応には、大いに問題がある。一方で安倍政権も昨年の衆院選を前に、北朝鮮情勢を「国難」と呼んで危機感をあおるなど、政治利用の姿勢が目立った。

 日朝の首脳会談の舞台としては、今秋のロシアでの国際会議もささやかれている。そのタイミングは、同じ時期にある自民党総裁選を意識したものではないかとの見方もでている。

 もし、そんな打算で動くならば、北朝鮮に足元をみられるだけだ。「拉致・核・ミサイル」は、国民の命と安全がかかる積年の懸案である。国内政治とは切り離し、万全の準備を整えたうえで最善の時期での首脳会談をめざすべきだ。

 安倍首相は一昨日、拉致被害者の家族らから直接、悲痛な思いを聞いた。最重要課題と言うのなら、解決をめざすと連呼するだけでなく、なぜこれまで進展しなかったのか冷静に考え、改善策をたてる必要がある。

 日朝間には、不幸な過去の清算と諸懸案の解決をともに確認しあった「日朝平壌宣言」が今も生きている。

 また、宣言の理念を踏襲した拉致問題での「ストックホルム合意」もある。日本政府が消極的な北朝鮮国内での真相究明調査も検討すべきだろう。

 核と短・中距離射程のミサイルの問題も含めた包括的な解決へ向け、自主的な対話の戦略をしっかり練らねばならない。

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