(Media Times)「ニュース女子」地方局継続 MX打ち切り後も16局=訂正・おわびあり
東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が3月いっぱいで取りやめた「ニュース女子」=キーワード=の放送が、地方局では今も続いている。放送倫理・番組向上機構(BPO)が番組に対し「重大な放送倫理違反があった」との意見を出したことを重くみて、この春で放送を終えた地方局もある。それぞれにどんな事情があるのか。
ニュース女子は、化粧品大手ディーエイチシーの関連会社「DHCテレビジョン」が制作。MXは制作に関与せず、完成版の納品を受けて「持ち込み番組」として放送していた。番組はMXを通して放送後に地方局にも供給され、MXとは異なる曜日や時間帯で放送されてきた。
だが昨年1月、沖縄の米軍基地反対運動を特集した際に、参加者に取材することなく侮蔑的な表現を用いたことなどが問題視された。BPO放送倫理検証委員会はMXが事前チェックを適切に行わなかったとして「放送してはいけない番組を放送した」(当時の川端和治委員長)と厳しく批判。これらを契機にMXは放送終了を発表し、歩調を合わせるように10の地方局も3月で放送をやめた。
朝日新聞の取材によると、放送を終えたのは福島中央テレビ▽千葉テレビ▽テレビ新潟▽テレビ愛知▽サンテレビ(兵庫県)▽山陽放送(岡山県・香川県)▽四国放送(徳島県)▽南海放送(愛媛県)▽長崎国際テレビ▽熊本県民テレビ。多くの担当者は「総合的に判断した」と説明する。
一方で、4月以降も放送を続けている局も少なくとも16局あった=表。
どの局も、BPOが審議の対象とした昨年1月の回は、放送していないと取材に答えた。ある地方局の担当者は他の回についても「社の基準でチェックし、政治的公平に問題がないか、誹謗(ひぼう)中傷がないかなどを確認した上で放送している」と説明する。問題点をDHC側に指摘して内容を修正したこともあるという。「修正に応じないため放送を見送った回もあった」と明かした。
■持ち込み番組、局にうまみ
BPOから放送倫理違反の指摘を受けたからといって、放送局は必ずしも放送を取りやめる必要はない。それでも放送をやめた地方局の幹部は、番組を作っているDHC側がBPOの調査に協力的でなかったことなどを重視したと語る。「放送を続ければ、うちの信用に関わると考えた」
では放送を続ける局にはどんな事情があるのか。地方局の幹部は「リスクはあっても、営業的に『おいしい』番組だからだ」と指摘する。持ち込み番組は、制作費の負担がないため局にとってうまみが大きい。放送していない局からも「ニュース女子に限らず、通販など持ち込み番組はどれも、局の都合で打ち切るのは営業的に厳しい」「豪華な女性タレントが出ているし、悪くない番組だ」などの声が上がる。
キー局に比べ経営基盤の弱い地方局は、コストのかかる自社制作に限界がある。キー局の自社制作比率は9割前後だが、ニュース女子の放送を続ける地方局の場合、5~13%(日本民間放送連盟調べ、2017年4月)だ。元BPO放送倫理検証委員の水島久光・東海大教授(メディア論)は「広告収入が減り、持ち込み番組や外部から購入した番組に頼らざるをえない状況にある」と地方局の現状を分析する。
ただ、水島さんはDHC側が「BPOの指摘を真摯(しんし)に受け止めているように思えない」ことを懸念。「番組内容に問題がないとしても、BPOを尊重しない番組を放送するのは問題があるのではないか。放送業界全体に対する信頼を失いかねない」と指摘する。
DHCの吉田嘉明会長は先月、オピニオンサイトに投稿。BPOについて「委員のほとんどが反日、左翼という極端に偏った組織に『善悪・正邪』の判断などできるのでしょうか」などと書き、地方局では放送を続けると表明している。(矢田萌、真野啓太)
◆キーワード
<ニュース女子> DHCテレビジョン制作の番組。ネットでも無料で配信されている。BPOから「重大な放送倫理違反」を指摘されたMXは、番組名の変更や制作プロデューサーの派遣、番組内容と演出方法の全面的な変更などをDHC側に申し入れてきたが協議は不調に。MXでは3月末で放送を終えた。
■4月以降もニュース女子の放送を続ける放送局
青森テレビ、岩手めんこいテレビ、秋田テレビ、さくらんぼテレビ(山形)、静岡第一テレビ、チューリップテレビ(富山)、石川テレビ、福井テレビ、びわ湖放送(滋賀)、奈良テレビ、テレビ和歌山、山陰中央テレビ(島根・鳥取)、テレビ山口、テレビ高知、サガテレビ、テレビ宮崎
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Media Times(メディアタイムズ)
<訂正して、おわびします>
▼16日付社会面「メディアタイムズ 『ニュース女子』地方局継続 MX打ち切り後も15局」の記事で、「放送を終えた」局として挙げたテレビ山口は、4月以降も放送を続けていました。放送を続ける局が朝日新聞の取材で少なくとも「15局」としたのは「16局」の誤りで、見出しとともに訂正します。これに伴い、3月で放送をやめた地方局の数も、「11」ではなく「10」になります。確認が不十分でした。なお、掲載後の取材で、大分放送も放送を続けていることがわかりました。22日時点では、少なくとも17局が放送を続けています。
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