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 北朝鮮との非核化交渉中は、米韓合同軍事演習を中止する――。トランプ大統領の意向を受け、米政府は8月に予定されていた定例の米韓演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を中止する方針だという。

 米朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、朝鮮半島の「完全な非核化」を約束したが、いつまでに、どのような形で非核化を進めるのか、その検証をどうするのかなど、具体案づくりはすべて今後の交渉に委ねられた。

 軍事演習の見直しは、北朝鮮に後戻りする口実を与えず、対話の歯車を確実に回すための信頼醸成に資する。北朝鮮の対応を見ながら、「圧力」に主眼を置いた大規模な演習の停止や、期間の短縮、規模の縮小などを検討するのが現実的だ。

 ただ、手放しで評価はできない。この問題は、トランプ氏が首脳会談後の記者会見で、合同演習を「戦争ゲーム」と呼び、「とてつもなくお金がかかる」として、唐突に中止する考えを示したことが発端だった。

 安全保障の問題を、ソロバン勘定だけで判断するかのような発想も気がかりだが、最大の問題は、同盟国である韓国や日本と、事前に十分な調整を行った形跡がないことだ。トランプ氏の発言直後、日韓両政府内に困惑が広がったのも無理はない。

 在韓米軍は北朝鮮と向き合う最前線であり、対中国でも重要な役割を担う。練度を高め、有事の即応力を維持するために演習は重要だ。東アジアの安全保障に影響を与える方針転換を一方的に打ち出すのは、「同盟軽視」と言わざるを得ない。

 北朝鮮の非核化と朝鮮半島の平和体制の構築という難事業は、日米韓の緊密な連携なしに実現は難しい。トランプ流に振り回され、3カ国の足並みが乱れれば、北朝鮮につけいる隙を与えるだけだ。ポンペオ米国務長官を迎えてソウルで開かれた日米韓外相会談を足場に、態勢の立て直しを急ぐ必要がある。

 米朝交渉と並行し、3カ国による工程表の具体化を急ぐべきだ。演習見直しも、その大きな枠組みの中に位置づけられねばならない。

 北朝鮮と関係の深い中国やロシアとも協力し、地域全体の信頼醸成に努めることも、米朝交渉への後押しとなろう。

 南北朝鮮と日米中ロの6者協議のような枠組みを生かし、例えば、朝鮮半島の軍備管理をテーマに防衛当局間の協議を立ち上げるのも一案だ。東アジアの将来像をめぐる議論に、日本も主体的に関わりたい。

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