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 わが子が自ら命を絶った無念と疑問、真相を知りたいという遺族の思いに向き合うことが出発点なのに、調査メモを隠蔽(いんぺい)するとは言語道断だ。自殺した生徒の尊厳も傷つける背信行為である。

 再調査を徹底し、その結果を遺族に包み隠さず説明する。一連の取り組みを通じて、学校や行政への信頼を取り戻していかねばならない。

 2016年秋、神戸市の市立中学校に通う3年の女子生徒が自殺した問題で、神戸市が再調査に乗り出す。自殺直後に中学校の教員らが生徒6人と面談し、いじめをうかがわせる聞き取りのメモを作っていたのに、市教育委員会の担当者が主導してメモを隠していた。

 遺族がメモの開示を求めていたが、市教委の担当者は「情報開示は終わっており、今さら出せない」と隠蔽を指示し、当時の校長も従った。自殺を受けて設置された外部有識者による調査委員会は昨年夏の報告書で「メモは破棄された」としたが、後任の現校長がメモの存在を把握し、市教委に報告。今年春に隠蔽が発覚した。

 自殺直後の聞き取りメモは、中学校の複数の教員らが共有していたという。現校長からの指摘を受けた市教委の当時の教育長も、調査を指示しながら報告を求めず、事態を放置した。

 隠蔽について調べた弁護士は、市教委の担当者と当時の校長によってメモは存在しないことにされたと結論づけたが、学校ぐるみ、市教委ぐるみだったと言われても仕方がないのではないか。

 神戸市は、これまでの調査は不十分と判断し、市長部局で再調査を進める。昨年夏の報告書は、いじめがあったことを認定しつつ自殺の原因は特定しなかったが、改めていじめと自殺の因果関係を調べる。報告書の作成過程でメモの隠蔽が行われ、調査への信頼が損なわれただけに、当然の対応だろう。

 まず問われるのは、市が新たに置く調査委員会のあり方だ。委員の人選を通じて「第三者」の目を徹底し、多角的、専門的に情報を精査する。市議会も当時の教育長らの参考人招致を検討しており、連携しながら真相を解明してほしい。

 文科省のいじめ調査に関するガイドラインは、事実関係を明らかにしたいという保護者の切実な思いを理解し、対応することを基本姿勢に掲げている。

 丁寧に事実を積み上げ、事実に真摯(しんし)に向き合う。それが遺族の求めることであり、失った信頼を回復する道である。

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