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 人権を重んじる大国を標榜(ひょうぼう)してきた米国が、自らその看板を下ろす行動を続けている。国際機関でも米社会でも、トランプ政権の人権軽視が甚だしい。

 米国が、国連人権理事会からの脱退を発表した。国連総会が選ぶ47の理事国が集い、世界の人権を監視している組織だ。

 その活動が偏向しているというのが、脱退の理由だという。実際には、米国の友好国イスラエルへの肩入れのためだ。

 先月、パレスチナのデモ隊にイスラエル軍が発砲し、多数が死傷する事件がおきた。人権理事会は調査団の派遣を決め、国連総会はイスラエルによる攻撃を非難する決議をした。

 米国はこれに反発したわけだが、そもそもパレスチナの怒りの原因をつくったのは米国だ。国際批判を無視して、在イスラエル米大使館をエルサレムに移したことが騒乱を招いた。

 中東の安定を顧みない外交で混乱を招きながら、国連の対応が気に入らないとして、人権理事会から脱退する。そんなトランプ政権の身勝手さは、世界の失望を買うだけでなく、米自身の影響力を衰えさせている。

 人権理事会は、北朝鮮やシリアなどの人権侵害にも取り組んできた。これらの国の後ろ盾である中国やロシアは、米国批判を強めている。人権を軽んじる強権国が発言力を増す機会を、米国が提供している。

 問題の根本は、トランプ大統領の人権感覚にある。かねて人種や性差別などで不適切な言動を重ねてきたが、今月は移民への対応が論議を呼んでいる。

 拘束した移民の親と子どもを当局が引き離す痛ましい状況が伝えられ、与野党を超えて抗議が広がった。政権はやむなく対応を変えたが、不法移民を例外なく拘束し、訴追する「不寛容政策」は続けるとしている。

 移民政策は各国に共通する難題ではあるが、移民大国の米国が多様な包容力を失う意味は深い。今後も続く移民・難民の波と、米国など受け入れ側の摩擦は、国際的な人権水準を守る上で大きな不安要因となろう。

 日本にとっても影響は重い。トランプ氏は今月に会った北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)氏をたたえ、「彼が話す時、国民は直立して聞く。米国民も同じようにしてほしい」と語った。人権問題をただす決意は見えない。

 人権理事会脱退について、菅官房長官は「他国の対応にコメントすべきでない」と述べた。だが日本は、理事会の場で拉致問題にも取り組んできたのだ。米国に対し、復帰と建設的な関与を促す責任がある。

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