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 法案審議の参考にするために招いた民間人に対し、国会議員が心ない暴言を吐く。言論の府を自らおとしめるヤジに驚きあきれ、憤りを感じる。

 受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案を審議中の衆院厚生労働委員会で先週、自民党の穴見陽一衆院議員(大分1区)が、参考人として出席した肺がん患者に向け、「いい加減にしろ」とヤジを飛ばしていたことがわかった。

 自民党内では昨年5月、大西英男衆院議員が、対策を訴えた同僚議員に「(がん患者は)働かなければいいんだよ」と発言し、謝罪している。

 改正案は、飲食店の屋内を原則禁煙としたが、例外規定により、既存店の55%で喫煙が認められる。原案からの大幅な後退は、自民党内の反対に押されてのことだ。穴見氏のヤジは、党内になお根強い異論を反映したものだろう。

 批判の高まりを受け、穴見氏は謝罪コメントを発表した。発言を妨害する意図はなく「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想(おも)いで呟(つぶや)いた」というが、参考人が「喫煙者の方がどこも吸うところがないじゃないかとおっしゃるのもすごくよくわかる」と配慮を示した矢先のヤジだった。とってつけた言い訳と言わざるを得ない。

 穴見氏はファミリーレストラン運営会社の役員を務めており、規制がかかる当事者でもある。対策の強化を求める者への恫喝(どうかつ)まがいの発言を「呟き」で済ますわけにはいかない。

 自らは喫煙歴がなく、受動喫煙でステージ4の肺がん患者となったという参考人は、修正すべき法案の問題点を淡々と指摘した。目の前の相手に対する誠実さも想像力もうかがえない穴見氏には、議員としての資質を疑わざるをえない。

 自民党の高鳥修一・厚労委員長は、穴見氏に口頭で厳重注意した。しかし、国会の品位を汚した、参考人への侮辱に対する対応としては甘過ぎないか。まずは自民党自身が、党内で厳正な処分を検討すべきだ。

 安倍政権下での国会審議では、首相本人や麻生財務相らが、答弁席から不規則発言することがしばしばある。黒衣であるはずの首相秘書官が、野党党首の質問に対しヤジを浴びせたこともあった。

 異論に耳を傾けず、批判に対し、敵意もあらわに言い返す。そんな政権の姿勢が、国会論戦の荒廃を助長しているのではないか。軽んじられているのは、結局、私たち国民であることを忘れてはなるまい。

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