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 特定の臓器や病気だけではなく、患者の全身を診て必要な手当てをする。そんな医師としての当然の務めをないがしろにする行いと言わざるを得ない。

 千葉大病院が、この約5年間に9人の患者のCT検査の結果を見落としていたと公表した。うち5人については、画像を診断した放射線科の医師ががんの疑いなどの異常に気づき、報告書で指摘したのに、受け取った肝心の主治医が見逃した。自分の専門部位にだけ注意を払っていたのが原因だという。

 患者にとってはおよそ信じられない話だが、実は同じような例は各地で起きている。

 医療事故の分析にあたる日本医療機能評価機構によると、約1千の病院を対象にした調査で、15年1月から18年3月末までに、画像報告書の所見見落としなどが計37件報告された。

 機構は先月、全国に注意を喚起した。昨秋、同趣旨の通知を出した厚生労働省も、対策の徹底を再度求めた。各病院はいま一度、足元を点検してほしい。

 機構によると、主治医が画像をみて自ら診断し、報告書に目を通していないケースも複数あったという。過信は禁物だ。

 技術の進歩により、想定外の部位で病変が見つかることはよくある。主治医は報告書に謙虚に向きあい、画像を診断した医師は、異常や兆候を見つけたら確実に主治医に伝える。この連携を徹底する必要がある。

 千葉大では、画像を読む医師の数に比べてCT検査の依頼が多く、診察時までに報告書が間に合わなかった事例もあった。今後は人数を増やして体制を強化するという。CT検査のニーズはさらに高まると予想され、それを担う医師の養成・確保と技術の向上は、ひとり千葉大だけの課題ではない。

 ITも活用したい。未読の報告書があると警告表示がつく。画像を見た医師が重要な所見を書きこんだ時は、体裁が変わるなどして誰もが必ず気づくようにする。そんな電子カルテの導入・普及を進めるべきだ。

 同じく、がんを疑う報告書の記載の見落としがあった東京慈恵会医科大病院では、この4月から診断時に患者に報告書を渡すことを始めた。本人と一緒に内容を確認することで、再発を防ごうという試みだ。

 医学界には、後で責任追及の材料にされかねないといった理由から、診療情報の開示をためらう空気が依然としてある。だが医療の細分化・専門化が進むいま、患者も交えた幅広い情報の共有は、事故防止の観点からもその必要性を増している。

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