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 空の交通で使われる地名をめぐり、脅しのような強制を迫る。異様というほかない。

 中国政府の航空管理部門が4月、各国の航空会社に台湾の表記について通知を出した。

 ネット上などで示す「台湾」は「中国台湾」とせよ。地図の上でも台湾を中国の一部として描け。そんな要求である。

 期限も設けられている。応じない場合は違法行為として処罰するとし、中国での経済活動への影響が強く示唆されている。

 一国の政府が外国の民間企業に対し、自らの政治的な見解に従わなければ、処罰すると一方的に通告する。それは明らかに不当な検閲行為である。

 「台湾」という表記は、広く国際社会で使われている。それは、「一つの中国」という原則を堅持する中国の立場に十分配慮したものだ。

 それを唐突に「中国台湾」に変えよというのは、自らの主張を強めるための要求のつり上げでしかない。無用な混乱を招く乱暴なふるまいである。

 台湾はいま、独立志向をもつ民進党の蔡英文(ツァイインウェン)政権下にある。中国の習近平(シーチンピン)体制は圧力を強めており、今回の動きもその一環とみられている。

 米政府は「全体主義的でナンセンスな措置だ」と批判している。日本政府も中国政府に懸念を伝えた。国際社会は引き続き中国に自制を求めるべきだ。

 一方で、全日空や日本航空など多くの航空会社はある程度、要求に応じる対応をとり始めている。制裁をともなって圧迫されれば、企業は応じざるをえない面があるのは事実だ。

 中国では最近、こうした外国企業への検閲強化の動きがほかにも出ている。1月には上海の外資系ホテルも台湾の表記をめぐり、当局の調査を受けた。中国における正常な企業活動が、強権的な検閲に阻害されることを懸念する。

 中国は13年に東シナ海に防空識別圏を設けた際も、各国の航空会社に届け出を求め、応じない場合は必要な措置をとるとした。責任ある大国を自任するなら、そんな脅しのようなやり方は改めるべきだ。

 問題の背景には、共産党政権の国内での言論統制があるとの指摘もある。自国批判を制限されたネット上には極端に民族主義的な声があふれている。その中で外国航空会社の地名表記もやり玉に挙げられた。

 中国政府はそんな偏った声に押されて偏狭な政策を決めたのか。もしそうであれば、自らのゆがんだ統制による自縄自縛に陥っていることになる。

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