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 女性議員が一度も誕生したことのない市議会が鹿児島県にある。桜島に接する垂水(たるみず)市。市の幹部も女性ゼロというこの街で、来春の統一地方選に向け女性議員誕生をめざす団体が立ち上がった。5月には「候補者男女均等法」が成立。女性の政界進出は進むのか。

 24日、垂水市の市民館でセミナーがあった。主催は「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」。出席した約30人を前に、代表の平神純子さん(61)が「社会は女性を待っている」と来春の市議選への立候補を呼びかけた。出馬を考えたいという30歳の女性は「実家の商売への影響など悩みを相談したい」と話した。

 平神さんが、公益財団法人「市川房枝記念会女性と政治センター」(東京都)の資料などから調べたところ、過去に一度も女性議員が誕生したことのない市は、全国791市のなかでも極めて珍しいという。

 ■過去に一度も

 垂水市は人口約1万5千人。市選管などによると、1958年の市制施行から女性は4人が立候補したが、全員落選した。99年に立候補した女性は最下位当選者に138票届かず、その後は立候補もない。現在の議員定数は14で、500票前後が当選ラインだ。

 あるベテラン市議は「俺たちが女性市議の誕生を阻んでいるわけではない。女性に覚悟があるのかということ」。市男女共同参画推進協議会の川崎あさ子前会長(69)は「一度もいたことがないから、女性議員がいることの意義をみんな分かっていない」と話す。

 「女性ゼロ」は議会だけではない。市長や副市長、課長ら幹部23人も全員男性だ。市職員のうち女性は2割を超えるが、市の課長に女性が就いたこともない。

 今回のセミナーを中心となって開いた平神さんは、鹿児島県南さつま市議だ。これまで当選5回、落選を4回経験している。

 看護師を務めた後、県内の私立大で政治学を学び、2児の母だった95年、合併前の加世田市議選に立候補した。選挙戦の前には妊娠が分かった。臨月での選挙に「出産も選挙も諦めない」と訴え、初当選。当選の5日後に出産した。

 子育てをしながらの議員生活。夫や両親と共に乗り越えた。「子育てなど福祉の話は、女性の生活者としての視点が大事。当事者が議員になって声をあげることが必要だ」

 初当選後、会を立ち上げた。全国市区町村の女性議員の存否を調べ、99年版の「全国自治体女性議員マップ」を作成。3252市区町村に3630人いた。その後に市町村合併が進み、2015年版では、1741市区町村に3819人だった。「全ての自治体に女性議員がいるようになる日も近い」と期待する。

 今年5月、候補者男女均等法が成立。国と地方すべての議会選挙で男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に求めた。

 17年衆院選で当選した女性の割合は10・1%。各国議会でつくる列国議会同盟の今年6月時点の調査によると、日本は193カ国中158位で、国会議員の女性比率の世界平均23・8%の半分以下だ。総務省がまとめたデータでは、市区議会における女性議員は17年12月末現在で全体の14・9%、町村議会では9・9%で、衆院と大差はない。

 ■「一歩勇気を」

 来年は統一地方選。会では「女性ゼロ」の垂水を象徴として位置づけ、候補者探しから当選までをサポートをすることを決めた。県内外の女性議員らと、名簿作りやポスティングなどの事務作業から協力する。

 候補者男女均等法は政党への努力義務規定を課すにとどまり、政党の公認を得ず無所属で立候補する人が多い地方議会で力が発揮されるか課題がある。だが、セミナーで講演した元衆院議員で厚生労働政務官も務めた藤田一枝さん(68)は「一歩踏み出す勇気があれば垂水にも女性市議は生まれる」と訴える。

 同法は自治体にも「選挙の公正を確保しつつ、必要な施策を策定し、実施するよう」求めている。会の依頼を受け、市はセミナーを告知するチラシを市内全戸に配布した。

 鹿児島県では昨年4月、垂水市と同じ大隅半島にある南大隅町で3人の女性候補が初当選した。垂水市議の間でも話題になったという。市議会の池山節夫議長は話す。「女性が3~4人も出るとなれば、どれだけ票が動くか分からない。現職議員も慌てるだろう」(野崎智也、福井悠介)

 <訂正して、おわびします>

 ▼25日付総合4面「返上できるか女性ゼロ議会」の記事で、全国市区町村の女性議員について、「全国自治体女性議員マップ」の2015年版で「1788市区町村に4070人」とあるのは、「1741市区町村に3819人」の誤りでした。47都道府県を含めた数字を記載するなどしていました。

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