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 混乱が続く中東で、トルコは比較的安定した大国である。その国内情勢が揺らげば、地域のみならず欧州へも波紋が及ぶ。

 エルドアン大統領には、国を分断する強権支配に陥らぬよう適切な政治運営を望みたい。

 15年にわたりトルコを統治してきたエルドアン氏が、大統領選で再選された。着実な経済成長が評価され、イスラムを重んじる保守層の支持も根強い。

 だが、今後に向けては懸念が強まる。昨年の憲法改正で強大な権力を手に入れるからだ。

 トルコはこの選挙後、議院内閣制を廃止する。議会の解散、閣僚や上級公務員の任命、予算案の提出、非常事態の発令などの権限が大統領に集中する。

 任期は今後5年で2期まで可能。三権分立が崩れ、個人統治が強まる不安が指摘される。

 エルドアン氏は、これまでも強引な手法が目についた。

 2年前のクーデター未遂事件後にはテロ対策として15万人を拘束し、公務員11万人を解雇した。批判的な報道機関を閉鎖し、大統領選挙前にはソーシャルメディアの規制も強めた。

 米国のNGOは今年、トルコの自由度を「部分的に自由」から「不自由」に格下げした。

 エルドアン氏は勝利演説で「勝者は国民全員だ」と団結を訴えた。ならば、その言葉を誠実に実行する必要がある。

 得票率は約53%。有権者の半数近くが批判票を投じたことを真剣に受け止めるべきだ。

 中東ではイラクやエジプトで独裁政権が倒れた後、民主的な選挙が行われた。だが、勝者が敗者を「敵」として排除したため社会が分断し、混乱が続いている。それがテロ組織につけ入る口実も与えた。そうした愚を繰り返してはならない。

 安倍首相は「見事な大勝利」と祝辞を贈った。トルコと長い友好関係を持つ日本は、時には率直な苦言も呈すべきだ。

 内政と同様、エルドアン氏は外交でも強硬ぶりがめだつ。

 隣国シリアに軍事介入したほか、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討のやり方などをめぐり米国と関係が悪化した。欧州とは人権や難民問題で対立している。その反動で、NATO加盟国でありながら最近はロシアに接近している。

 「アラブの春」以降、中東では各国の利害が交錯し、亀裂が深刻だ。欧州とアジアを結び、8千万の人口を持つトルコは本来、新たな秩序づくりの重責を担う立場にある。

 「強い指導者」を自任するエルドアン氏には、地域の安定をもたらす努力を重ねてほしい。

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