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 これが「女性活躍」を掲げる安倍政権中枢の本音なのか。人権意識の乏しさ、政治が果たすべき役割への無理解に、あぜんとする。

 自民党の二階俊博幹事長が都内で講演し、少子化問題にふれて次のように語った。

 「このごろ、子どもを産まない方が幸せじゃないかという勝手なことを考えて(いる人がいる)」「この国の一員として……みんなが幸せになるためには子どももたくさん産んで、国も栄えていく」

 まるで、「産めよ殖やせよ国のため」と呼びかけた戦前の発想だ。「一夫婦の出生数平均五児」などの目標を掲げた人口政策確立要綱を閣議で決めた時代と、根っこは同じではないか。

 言うまでもなく、結婚も出産も、個人の自由だ。政治家が口出しする話ではない。政治がなすべきは、結婚、出産を希望する人が安心して子どもを産み、育てることが出来る環境を整えることだ。

 深刻な少子化の責任を、国民に転嫁するのも全く筋違いだ。女性の社会進出、家族の多様化など、社会の変化に対応し、必要な政策を進めてこなかったのは、政治の怠慢である。

 1992年には共働き世帯が専業主婦世帯を初めて上回った。子育て支援の必要性が叫ばれたのに、日本の予算は先進諸国の中で最低レベルという状態が続き、出生率は2005年に1・26まで落ち込んだ。01年に掲げた待機児童ゼロの目標はいまだに達成されていない。

 同じ講演で、二階氏は今の日本に貧困問題がないかのような発言もした。不安定な収入、将来への不安から結婚や出産をためらう若者が多くいる現実が、目に入らぬのだろうか。7人に1人という子どもの貧困率は、先進諸国で最悪の水準だ。

 国家のために子どもを産むのは当たり前、子育ては女性の仕事だという価値観に基づく発言は、自民党の有力政治家がこれまでも繰り返してきた。子どもを一人も産まない女性の老後に税金を使うのはおかしいと述べた森元首相(03年)、女性を「産む機械」に例えた柳沢伯夫・厚生労働相(当時、07年)。

 最近も「『男も育児だ』とか言っても、子どもには迷惑な話かも」(萩生田光一・党幹事長代行)などの発言があった。

 長年、政権を担ってきた自民党のそんな姿勢が、子育てを社会全体の問題ととらえて支援を充実させることを阻み、少子化を深刻化させたのではないか。そのことを猛省し、発想を転換することが出発点だ。

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