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 大阪北部地震ではさまざまな場面で都市の弱点が明らかになった。多くの帰宅困難者の発生もそのひとつだ。丁寧に検証して教訓をくみとりたい。

 JRや阪急、大阪メトロの運行再開が夜になったため、主要駅には帰宅の足を奪われた人が長時間滞留した。大阪駅と新大阪駅の間にある淀川にかかる橋は、歩いて帰途に就く人の列が車道にまであふれた。

 人が集中すると転倒などの危険が高まる。車を使おうとすると道路は渋滞し、緊急車両の通行まで妨げてしまう。首都圏で約515万人の帰宅困難者を生んだ東日本大震災のとき、思い知ったことだった。

 政府は当時の混乱を受け、3年前にガイドラインを定めた。発災後、行政が帰宅を抑制するように呼びかける。企業は3日間、社員を無理に帰らせない。かわりに滞在施設や食料を準備する――といった内容だ。

 しかし今回、大阪府は「被害は局所的」と判断し、帰宅抑制の措置はとらなかった。結果として後手に回ったのは否定できない。どの段階で、何をすべきだったか、点検が必要だ。

 東京都や愛知県なども、ガイドラインに沿った独自ルールを定めている。ただしそれは、首都直下や南海トラフといった大規模地震に備えるものだ。震度6弱だった今度のような地震でも混乱は起きるという構えで、対応力を磨く必要がある。

 東京都は昼間人口が約1500万人。首都直下地震での帰宅困難者の数は、茨城県を含む1都4県で最大800万人と予想される。最悪の事態も考えながら、ガイドラインの3日間にこだわらない帰宅抑制や在宅勤務の呼びかけなど、状況に応じた選択肢が当然あっていい。大切なのは早めに情報を提供して、人々が判断に迷わないようにすることだ。

 企業も自主的に対応できるよう準備しておく必要がある。

 いち早く社員に自宅待機の指示メールを出したり、宿泊用に社員寮を開放したりした会社もあった。しかし地震発生が朝だったこともあり、出社するかどうかを社員の判断にゆだねたところも多かったようだ。

 行政の判断は判断として参考にしつつ、自助・共助の観点から、企業はそれぞれの事業継続計画(BCP)を策定して、備えを固めておきたい。

 鉄道の運行は安全の確認が大前提だ。そのうえで、駅や街に群衆が滞留しないように、どんな情報を発信し、いかなる措置をとるべきか、国土交通省と鉄道各社は知恵を絞って欲しい。

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