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 自民、公明両党が日本維新の会、希望の党と共同で、憲法改正手続きを定める国民投票法改正案を国会に提出した。

 ショッピングセンターなどに共通投票所を設置できるようにするなど、より投票しやすい環境を整えるのが狙いだ。2007年の国民投票法成立以降の公職選挙法改正で、既に国政選挙に導入されている仕組みを国民投票にも反映させる。その内容自体に異論はない。

 残念なのは、与党側が、立憲民主や国民民主などの主要野党が反対するなかで提出に踏み切ったことだ。

 改正案の中身について、与野党で対立があったわけではない。改憲そのものに反対する共産、社民両党を除く与野党は、いったん「今国会で成立を期する」との申し合わせに大筋で合意していた。

 ただ、働き方改革関連法案などで、与党が野党の求める慎重審議に応じず成立を急ぐ姿勢を見せたため、野党側が「改正案を審議する環境が整っていない」と態度を硬化させたのだ。

 憲法審査会は、その前身の憲法調査会時代から、「数の論理」に流れがちの他の委員会とは一線を画し、丁寧な議論と党派を超えた幅広い合意形成を重んじてきた。数の力でその慣行が破られれば、与野党が腰を落ち着けて憲法を論じる舞台そのものが壊れかねない。

 思い起こされるのは、第1次安倍政権下の07年に国民投票法が成立した時の光景だ。憲法に改正手続きが定められているのに、そのための法律がないのは「国会が義務をおざなりにしている」――。そんな安倍首相のかけ声で、当時の野党第1党だった民主党との協調路線を崩して、与党が採決を強行した。

 この時の対立が尾を引いて、憲法審査会はその後数年間、休眠状態が続いた。与党は近く改正案の採決をめざすというが、かつて自らの首を絞めた経験に学び、与野党が冷静に議論できる状況を整えるべきだ。

 国民投票をめぐっては、今回の改正案に盛り込まれなかった課題もある。焦点のひとつが、賛否を呼びかけるテレビCMの扱いだ。投票の14日前から禁じられるが、それ以前は完全に自由なため、資金力の有無で公平性が損なわれる可能性が指摘されている。ネット広告の扱いや最低投票率を設けるかなども論点だ。

 主権者である国民が納得して投票できるルールをどう整備するか。憲法審査会には、政権や政党の都合ではない真摯(しんし)な議論を求める。

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