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 嫌がらせやいじめを意味する「ハラスメント」について、国際的に論議が高まっている。

 働く場での暴力や嫌がらせなどをなくすため、国際労働機関(ILO、加盟国187)は6月、法的拘束力のある条約をつくる方針を決めた。

 働き方や雇用をめぐる文化は国々で多様であり、議論は曲折も予想される。しかし、国際社会が共有すべき初の国際基準をめざす機運は注目に値する。

 これを機に日本でもハラスメントに対する意識を高めたい。人の尊厳を軽んじる人権問題として捉え、対策づくりや啓発など幅広い行動を起こしたい。

 「ハラスメント」が指す対象は広い。性的行為であるセクシュアルハラスメントは国際的に使われる言葉だが、日本では、職場の上下関係を背景にしたパワハラという言葉がある。

 妊娠した女性を冷遇するマタハラや、学校での教師と教え子の間のアカハラなど、さまざまな日本語が近年生まれた。

 暮らしの中で起きる差別や不快な行動を見逃さない意識が着実に育っているものの、具体的な取り組みは遅れている。

 ハラスメントは、「男性から女性」や「上司から部下」に限ったものではない。だれでも加害者や被害者になりえる。

 被害者側はとくに精神的な負担が大きく、精神疾患にいたるケースも多い。職場以外でも、スポーツ界をはじめ、病院などあらゆる場で起きる。

 まず心がけるべきは、早期の発見と解決のための制度づくりだ。予防のための意識教育、被害者がすぐ相談できる態勢、再発防止のための対処など、有効な手立てが求められる。

 我慢の限界を超えないうちに相談でき、周囲も通報できて救済につながる窓口の設置はとりわけ大切だ。職場や関係団体など、現場の組織による対処が基本だが、労働局など行政サービスの拡充も考えたい。

 そうした個別の現場の取り組みと並行して、法律面での整備も検討する必要がある。一概に罰則にまで踏み込まずとも、ハラスメントを防ぐ措置を義務づけるなどの方法がある。

 大切なのは、職場や学校など各所で、何がハラスメントであり、どんな配慮が必要かを考え、論議する過程で、広く問題意識が共有されることだ。

 「仕事上の指導だから仕方がない」「悪ふざけのうちではないか」。そう受け流してしまわないような、モラルの向上こそが肝要だろう。だれにとっても生きやすい社会をつくるため、一歩ずつ前へ進みたい。

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