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 日本大学アメリカンフットボール部を舞台にした不祥事は、大学スポーツ界がかかえる課題に社会が目を向ける、大きなきっかけになった。

 これを機に、改革をいかに進めるか。どこまで実効性と広がりのあるものにできるか。スポーツ庁をはじめとする関係者の力量が問われる。

 危険タックル問題を調べた学生競技連盟の規律委員会は、倫理とスポーツマンシップを欠いた指導▽外部に相談するすべを持たず、従うしかない学生の窮状▽そうした状況を放置した大学の責任――などを指摘した。日大自身が設けた第三者委員会も、日大本体のガバナンスのあり方に切り込む予定だ。

 程度の差はあれ、同じような問題は他の大学にもあるのではないか。日大アメフト部を他山の石として、大学スポーツの健全な発展に結びつく対策を講じなければならない。

 今回の事件は、学校や競技団体の垣根をこえた大学スポーツ全体の統括組織をつくる動きが進むなかで起きた。スポーツ庁が音頭をとって、全米大学体育協会(NCAA)を参考に、競技の安全性の確保、学業との両立、活動についての説明責任などを目標にかかげる。

 具体的には、指導者のライセンス制度の導入や研修の実施、事故情報の共有、授業との重複を避けるための試合日程の調整など、さまざまな対策が課題にあがっている。今月から細部をつめる作業が始まる。しっかりした工程表をつくって、着実に歩を進めることが重要だ。

 プロや五輪をめざす学生は限られ、一般企業に就職したり、子どもを指導する道に進んだりする者の方が圧倒的に多い。学業の充実を重視するのは当然で、取得単位数のチェックや、卒業・引退後のキャリア形成を見すえた支援など、本腰を入れてとり組んでもらいたい。

 不安があるとすれば、この構想のそもそもの始まりだ。

 スポーツ庁が当初思い描いたのは、テレビ放映権料や入場料収入で多額の収益があるNCAAの姿だった。経済を活性化させたい政権の意向に沿って「稼ぐ」ことが先に立ち、大学スポーツが直面する課題に対処する意識は薄かった。考え違いを、日大問題がわかりやすい形で突きつけたといえる。

 そんな迷走もあって、統括組織への理解は社会全体はもちろん、当事者である大学・学生の間でも深まっているとは言いがたい。きめ細かな情報発信を通じて、問題意識を多くの人と共有することから始めたい。

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