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 行政に対する信頼と大学入試の公正さとを、同時に揺るがす前代未聞の事件だ。

 文部科学省の科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(官房付に異動)が、受託収賄の疑いで東京地検に逮捕された。私大を助成する事業の対象に選んでほしいと東京医科大に頼まれ、その見返りに、自分の子どもを同医大に不正合格させてもらった容疑がもたれている。

 依頼をうけたとされる昨年5月、佐野前局長は省の要というべき官房長の職にあった。職員の天下りあっせんや加計学園をめぐる問題で、今に至るまで厳しい目が注がれている。逮捕容疑のとおりであれば、官僚としての倫理も、役所をとりまく状況への危機感も欠いたまま、私利を追求したことになる。

 大学受験では医学部の人気が依然として高く、東京医科大も例外でない。入学切符は医師の国家資格に通じ、職務に関して便宜を図ることへの「対価」に十分なりうる。もちろん大学側の責任も免れない。

 文科省はこの春、京都大や大阪大で発覚した入試ミスに厳しく対応し、合否に不公平が生じないよう指導していた。そのさなかに、当の幹部が子弟を不正に合格させていたとなれば、受験生はもちろん、各大学の不信と反発も深まろう。

 少子化により、大学は生き残りを迫られている。一方、政府は補助金のうち獲得を競わせる割合を厚くして「特色を打ち出せ」と発破をかけてきた。東京医科大が狙った「私立大学研究ブランディング事業」もその一つだ。昨年度は60の枠を188大学が競い、選ばれた同大には3500万円が支払われた。金額もさることながら、大学の箔(はく)づけとしての意味が大きい。

 選定には公正さが当然求められる。文科省は、大学関係者や専門家ら外部の有識者による委員会を設けて審査していると説明しており、前局長の関与の具合や影響力の有無は、今後の捜査を待たねばならない。

 だが、制度に恣意(しい)が入り込む余地はなかったか、審査が形骸化していた可能性はないか、その検証は文科省の責務であり、早急な調査と説明が必要だ。

 文科官僚と大学関係者は、日ごろから事業や補助金をめぐるやり取りがある。その近しさが構造的な癒着やなれ合いを生んではいないか。問題とされた事業以外の研究費や補助金の支給についても、公平公正の観点から点検を進めてもらいたい。

 文科行政のあり方全般が問われている。その認識を持って、事態に臨む必要がある。

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