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 あわせて42人の死者・行方不明者を出した「九州北部豪雨」から1年が経った。

 福岡県朝倉市から大分県日田市にかけての被災地には、山肌があらわになった斜面が残る。新たな災害を防ぐためにも、本格的な復旧が急がれる。

 驚くのは、いまも福岡県で423世帯の1032人、大分県で43世帯94人が、仮住まいを余儀なくされていることだ。

 国土交通省によると、山が削られて発生した土砂は東京ドーム8杯分の約1千万立方メートルに及ぶ。流木の量も両県の調べでは約38万立方メートルあり、過去最大級の規模だという。土砂・流木ともこれまでに撤去できたのは対象の半分強で、河川の護岸の復旧も応急措置にとどまる。

 仮住まいが解消されない最大の理由だ。将来に対する不安や焦りに加え、住み慣れた土地を離れ、培ってきた人間関係が切れてしまうことは、お年寄りをはじめとする住民に大きなダメージを与える。生活再建と心身の健康維持に向けたきめ細かな支援を、行政には求めたい。

 内閣府に設けられた有識者らによる検討会や、地元気象台の調査などによって、災害発生時の避難に関する課題や教訓も浮かびあがっている。

 被災した一帯は2012年にも豪雨に見舞われた。その経験をいかした防災マップづくりや地区ごとの避難訓練も行われ、意識の高い地域とされていた。

 実際、消防団や近所の人に促されるなどして、早期に避難して助かったという人がいた。一方で、声をかけられたのに自宅にとどまって命を落としたと考えられる事例や、逃げようとしたときにはすでに河川が氾濫(はんらん)していて、避難所までの経路が確保できなかったケースもある。土砂崩れや停電などによる通信の途絶もあった。

 過去に学びつつ、しかし「前は大丈夫だったから」と過信しない。緊急速報メールや防災行政無線など、情報を伝える手段を複数確保する。避難勧告や指示を早めに出し、余裕をもって移動できるようにする――。こうした対策を、官民それぞれの立場で着実に積み重ねたい。

 被災地のひとつ、福岡県東峰(とうほう)村の地元ケーブルテレビは番組で、「治山治水」ならぬ「知山知水」を呼びかけた。自ら住む土地のことを知り、周囲の人と協力しあい、気象情報に注意を払う。そしていざという時は、すみやかな避難を心がけて命を守る。それが何より大切だ。

 台風の影響などにより各地で大雨が続く。適切な対応で被害を最小限に食い止めたい。

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