[PR]

 この30年間で最大という水害への対応に、政府・国会をあげてとり組むべきときに、いったい何を考えているのか。

 政府与党は、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を審議するため、西日本豪雨の被害がまだ続いている10日に、参院内閣委員会を開いた。公明党から入閣し、法案を担当する石井啓一国土交通相は、約6時間そこに張りつき、カジノを設ける意義などを説明した。

 まったく理解できない。驚くことに、死者が200人を超え、なお多くの行方不明者がいる12、13日にも開会した。

 今は災害対応に専念する。それが、河川や道路の復旧を所管する石井氏がとるべき行動ではないか。非常識も甚だしい。

 野党は審議見送りを申し入れていた。人命を優先し、大臣を拘束すべきではないという当然の判断だ。だが今国会での法案成立をめざす与党が強行した。

 石井氏は「委員会の開会中でも秘書官を通じて災害対応の指示ができる」と釈明した。本当に支障はなかったといえるか。10日午前には広島県府中町で榎川が氾濫(はんらん)し、住民に避難指示が出た。詳しい情報はカジノ法案を審議中の石井氏に届いた。被災者はどう見ただろう。

 言うまでもなく災害対応は初動が大切だ。救援ヘリによる被災者の救出や航空機での搬送、緊急災害対策派遣隊の出動、支援物資の輸送……。いずれも国交省の仕事である。旧建設省の官僚出身で国交相に就任して約3年になる石井氏が、それを知らないはずはない。

 今回の災害は被災範囲が広域にわたり、物流への影響も出ている。多くの人が住まいを失うなか、居住地の確保と物資の輸送は一刻を争う。石井氏だけではない。その認識が政府与党にあるのだろうか。

 さらに週刊文春の報道で、西村康稔官房副長官らが米カジノ業者の関係企業にパーティー券を購入してもらっていたことが判明した。西村氏はIR議連の元事務局長だ。同氏は12日の内閣委で事実を認めたうえで「立法過程に影響を与えたことはない」と釈明したが、購入の経緯や他の議員にも同様の供与がないかをただす必要がある。

 ギャンブル依存症が増えないか、経済効果はあるのか、外国人旅行者がカジノに想定通り来るのかなどの疑問に、政府はいまだ納得のいく説明ができず、世論の理解も進んでいない。

 「人命よりも賭博優先か」。野党のこの批判こそ国民感覚に近い。問われるのは政治の役割は何かという根本的な問題だ。

こんなニュースも