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 200人を超える犠牲者を出し、いまだに行方不明者の捜索が続く西日本を中心とする豪雨災害。最初の大雨特別警報が出されてから、13日で1週間になった。平成になって最も多くの死者を出した豪雨災害は、西日本をどのように襲ったのか。

 ■土石流・決壊、様々な災害多発

 西日本豪雨では、山から平野まで、懸念されていたあらゆるタイプの災害が広い範囲で多発した。

 広島は花崗岩(かこうがん)が風化して崩れやすい「まさ土」でできた斜面が多く、斜面崩壊が目立った。崩れた巨岩や石、砂まじりの水が谷を猛烈な勢いで下る「土石流」が生じ、住宅を襲った。

 雨のピークが過ぎてから斜面崩壊が起きたり、上流でたまった土砂が川をせきとめて出来た「土砂ダム」が時間がたって決壊したりすることもある。

 平野部を流れる川は、周囲の山に降った水が集まり急に水位が上がる。川幅が狭い場所やカーブ、合流部などは水の流れが悪くなり、堤防が決壊しやすい。岡山県倉敷市真備町では、小田川の堤防が高梁川との合流部近くで決壊。川から水が一気に低地に広がった。

 ダムは下流で急な増水が起こらないよう調整機能がある。だが貯水量の限界に近づくとダム自体が壊れないよう放流量を増やさざるを得ない。愛媛県西予市の野村ダムが放流量を4倍にした後、下流が氾濫した。

 「山に囲まれ、急傾斜の川が多い日本に住む限り、今回の災害は誰にとってもひとごとではない」と立正大の島津弘教授(地理学)は話す。

 ■注意報・勧告・警報・指示… 避難、どのタイミングで ――倉敷・真備町を例に考える

 携帯の警告音が鳴り、テレビのテロップが流れる。災害が起きる可能性が強まると、注意や避難を呼びかける情報が次々に流れる。どのタイミングで逃げればいいのか。浸水被害に遭った岡山県倉敷市の事例と重ねつつ、専門家に聞いた。

     ◇

 【5日】午前7~8時、倉敷市で雨が観測された。気象庁が記録的な大雨の可能性があると周知したのが午後2時。午後11時、市は災害対策本部を設置した。

 【6日】午前11時半、市は市内の山沿いに高齢者らが避難を始める目安となる避難準備・高齢者等避難開始を出し、同市真備町では小学校に避難所が開設された。午後9~10時、市内で25ミリの降水量を観測。市は午後10時、真備町に避難勧告を出した。20分後、同町の小田川(南側)で氾濫(はんらん)危険情報。その20分後、市に大雨特別警報が出された。市は午後11時45分、急に水位が上がってきたとして「小田川南側が氾濫のおそれ。速やかに避難を」と川の南側のエリアに避難指示(緊急)を出した。

 【7日】午前0時半、国土交通省が小田川の氾濫発生を関係機関に連絡。同1時半、小田川の北側にも避難指示(緊急)。直後、同省は小田川の支流・高馬川の堤防決壊を把握した。

 真備町の男性(63)によると、未明に床上浸水したと思ったら、約30分~1時間後には濁流が2階の高さに。町は冠水し、死者の多くは高齢者だった。

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 <空振り恐れず、自発的に> 専門家は、空振り覚悟でも早めに避難する必要性を指摘する。

 「高齢者らは足元が見えにくい夜間の移動は避けるべきだ。堤防から水があふれれば前に進めず、今回は避難所が開設された日中の避難が望ましかった」

 こう指摘するのは、防災アドバイザーで元大阪市消防局北消防署長の森田武さんだ。避難指示(緊急)は午後11時45分と午前1時半。「災害の危険地域であれば、健常者も午後10時の避難勧告の段階で避難するべきだ」

 森田さんは以前の水害で被災者174人(平均年齢45.8歳)に聞き取り調査した。「着替え」(3分18秒)、「お金や貴重品を持つ」(4分48秒)、「履物を探してはく」(1分半)など緊急時に家を出るまで10分以上かかることが判明。

 「『まだ大丈夫』と迷っていると避難は遅れるもの。ハザードマップで自宅や宿泊先の危険性を確認し、それに応じて自発的、積極的に避難できるよう情報を集め早め早めの対応をしてほしい」

 ◇この特集は村上潤治、長富由希子、荻原千明、吉村治彦、編集委員・瀬川茂子が担当しました。